「特養に入ったからもう安心」と思っても、高齢者の体調は変わりやすく、病気やケガで、特養を離れて入院になることは珍しくありません。
特養の生活相談員時代に、ご家族様からたくさん質問されたのが
「入院したら特養の部屋はどうなるの?」
「退院後も戻れるの?」
という不安の声です。

この記事では、特養入居者が入院したときにかかる費用や、退院後の選択肢・注意点を、元生活相談員の立場からわかりやすく解説します。
特養の入居者が入院した場合、特養の費用はどうなる?

入院中も特養の部屋代(居住費)はかかる?
はい。入院中でも、居住費(部屋代)がかかることがあります。
入院して本人が特養にいなくても、退院後に戻るためにその人の居室を確保している場合は、居住費を請求できると厚生労働省が示しています。
厚労省の「介護サービス情報公表システム」に掲載されている特養でも、入院中も居住費を徴収すると明記している施設が複数確認できます。
介護サービス情報公表システムで、実際に滋賀県にある「特別養護老人ホーム アンタレス」を例に見てみます。

赤点線内にはこう書いてあります。
全段階を通じて入院中および外泊中も居住費がかかります。
なお、入居中に医療機関に入院した場合は、1日あたり以下の居住費となります。
(1)6日以内の入院 通常の居住費に加えて外泊加算250円/日もかかります。
(2)7日以上の入院 3,420円(第1段階~第3段階に該当する方は、2,066円)
要約すると、6日以内の入院では1日250円、7日以上の入院では 1日3,420円の費用がかかるとされています、
介護サービス情報公表システムは、全国の特養を含む介護サービスが検索できます。 ⬇︎

入院中の食費や介護サービス費はどうなる?
食費は食事を提供しない分、基本的にかからない施設が多いですが、介護サービスについては、通常の介護サービス費の代わりに「外泊時費用」という介護保険上の費用がかかることがあります。

外泊時費用の細かい仕組みまで覚える必要はありません。
1割負担なら1日250円前後で、ひと月に6日まで算定されます。
6日間で1,500円前後が目安、と覚えておけば十分です。
入院したからといって、特養に支払う費用がすぐに居住費だけになるとは限らないということですね。
病院代と特養の費用が二重にかかる?
はい。入院中は、病院の入院費と特養の費用を同時に支払うことがあります。
病院では入院費がかかり、特養では前述した居住費や「外泊時費用」がかかることがあります。
何にいくらかかるのかは、入居時や入院する前に施設へ確認しておくと安心です。
入院中の対応は施設によりいろいろな方針がある
ショートステイへの貸出
私が働いていた施設では、入院中のお部屋を(ご家族の了承を得られた場合に限り)、ショートステイの方に貸し出す仕組みがありました。

家族がすること
入院中に施設から
「○日から○日まで、ショートステイの方がお部屋を利用してもよいですか?」
と連絡が入ることがあります。
施設側は、本人の退院予定と重ならないように期間を調整します。
家族は利用を了承するかどうかを伝えるだけで、了承しても施設へ出向く必要はありません。
実際の運用
私が勤務していた特養では、介護度が高く、ほとんどベッド上で過ごす方など、お部屋の中を動き回る心配がない方を中心に調整していました。
「お部屋」というよりは「ベッドだけ」を貸し出すようなイメージです。
入院中のご家族にショートステイへの貸し出しを相談すると、了承してくださることが多かったです。
了承してくださった場合、その期間の居住費は元の入居者から徴収できません。
ただし、これはあくまで私が勤務していた特養での運用例ですので、
入院中の費用負担や居室の扱いは施設によって異なるため、各施設の運用を確認しておく必要があります。
入院時に家族がやること

① 特養と病院で情報を共有する
入院が決まったら、まずは特養に連絡します。
病状とあわせて、どのくらいの入院になりそうかも分かる範囲で共有しておきましょう。
② 入院中にかかる費用を確認する
入院中も居住費がかかるのか、施設に確認しておきましょう。
施設によっては、空いた居室をショートステイなどで利用している期間の扱いが異なる場合もあります。
こうしたルールは、入院してから慌てないように、入居時の契約書や重要事項説明書であらかじめ確認しておくこともできます。
③ 退院後の選択肢も考えておく
退院時の体調によっては、元の特養に戻れないこともあります。
その場合に備えて、老健や介護医療院、有料老人ホームへの入居、自宅に戻って訪問診療や介護サービスを利用する方法など、ほかの選択肢も少しずつ調べておくと安心です。
退院後どうなるか(4パターン)
長期入院になると、費用の面だけでなく
「そのまま特養に戻れるのか」「退所になる可能性はあるのか」も見極めが必要になります。

① 元の特養に戻れる
- 入院が短期間(数週間〜数ヶ月)
- 体や精神の状態が大きく変わっていない
最も一般的でスムーズなケースです。
② 別の施設・病院へ移る
医療依存度が上がった場合は元の特養に戻れない場合があります。
- 在宅酸素
- 胃ろう
- 点滴・輸血
- 頻回な痰吸引 など
どこまで対応できるかは、施設によって異なります。
胃ろうや、在宅酸素などは日中のみの看護体制でも管理ができる可能性もありますが
頻回な痰吸引となると、「いつ起こるかわからない。」「放置すると呼吸困難に陥る。」などの危険から
医療の体制が24時間でない特養では対応が難しく介護医療院や医療系施設へ移行となる事が多い印象です。
③ 長期入院で退去になる
入院が長引き、3ヶ月を超えても退院の見込みが立たない場合、施設から今後について相談されることが多くなってきます。
厚生労働省の基準に「おおむね三月以内」という言葉があることから、現場では「3ヶ月ルール」と呼ばれ、特養で生活している人が入院した場合、今後を考える一つの目安期間になっています。
「3ヶ月ルール」とは何か?

国の基準では、
「おおむね3ヶ月以内に退院できる見込みがある場合は、退院後に再び特養へ円滑に戻れるようにする」
という考え方になっています。
現場ではこの「3ヶ月」が、入院が長期化したときに退居を検討して、特養待機者に新しく入居してもらう目安として扱われることがあります。
どの特養でも「3ヶ月を超えたら自動的に退所」といった極端な話ではありません。
本人の状態や退院の見込み、施設の契約内容などを踏まえて、その後について施設・病院・家族などで検討していくことになります。
④ 介護度が下がり、入居条件から外れる
体調改善やリハビリで状態が良くなった場合、
特養は原則要介護3以上が入居条件のため、退去・他施設検討になる可能性があります。
✔ 戻れるケース
- 入院期間が短い
- 医療依存度が上がっていない
- 要介護3以上を維持している
✔ 戻れないケース
- 入院が3ヶ月以上長期化
- 医療依存度が上がった
- 要介護2以下に改善した
このどれかに当てはまると元の特養に戻れない可能性が高くなります。
元の特養に戻ることができれば、大きく生活環境を変えずに済みます。
では、元の特養に戻れない場合はどうなるのでしょうか。
特養から入院した人が元の施設に戻れない場合、どのような選択肢があるのかを順番に見ていきます。
特養から別の特養に移れるのか?

「今の特養から別の特養へ移れますか?」
この質問も、現場でもよく聞かれます。
制度上は可能ですが、現実的には非常に難しいです。
なぜ難しいのか?
特養は、「生活が限界に近い人」を優先して受け入れるルールの施設です。
すでに特養に入居している方の場合は、
住む場所と介護環境が確保されている状態ですので
緊急性が低く優先順位は下がります。

・車椅子で退院が決まったが、自宅は2階で階段しかない
・同居家族が明らかに虐待をしている
・日中見守れる人がいない状態で介護度が上がった
こうした「明日の生活が成り立たない人」が優先されてベッドは埋まっていきます。
退院後の特養以外の選択肢
退院後の生活先として現実的に考えられる5つの選択肢に絞って、入居条件や費用の目安、それぞれの特徴を簡単に紹介します。

1. 【公的】介護老人保健施設(老健)

在宅復帰を目的としたリハビリ施設。医療と介護の中間的な存在。
入居金なし
月額費用8万〜20万円ほど
入居条件要介護1〜要介護5
医師・看護師・リハビリ職(PT・OT・ST)が常駐し、機能回復を目的としたリハビリが受けられる。
3ヶ月ごとに在宅復帰の可否を検討される。
長期入所もあるが、本来は“自宅に戻るための一時利用”という前提。
病院退院後すぐ自宅が難しい人の受け皿として利用されることが多い。
特養よりは費用は高くなる傾向。
2. 【民間】有料老人ホーム(介護付き)

入居金0円〜数百万円がボリュームゾーン。中には数億円の所もあり。
月額費用15〜40万円
入居条件要支援1〜要介護5
介護サービスは施設に備わっている。
サービス内容がバラエティに富んでいてイベントなどが多い。
夫婦で同室に入居できたり、ペットと住めたり、温泉やレストラン付きなど
医療体制が整っている事が売りのところも。
利用料は高額ですが、選択肢が豊富。
3. 【民間】有料老人ホーム(住宅型)
生活の場に、外部の介護サービスを組み合わせて使うタイプ。自由度が高い。
入居金0円〜数百万円ほどが一番多いゾーン。こちらも高いところは数億円。
月額費用10万〜25万円ほど
入居条件自立〜要介護5
施設自体には介護サービスはなく、訪問介護・訪問看護などを外部契約で利用。
自分に合ったサービスを組み合わせられるため、柔軟な生活が可能。
見守りや食事提供などの生活支援は施設側が対応。
介護度が上がると外部サービス費用が増え、総額が上がりやすい。
少し話はそれますが、民間経営の老人ホームの費用は、主に次のような条件で大きく変わります。
- 立地:都心・駅近など、利便性の高い場所ほど高くなる傾向
- 建物の新しさ:新築や新規オープンの施設は高くなりやすい
- 運営会社:大手企業など、運営会社によっても料金設定が異なる
大都市の駅近にある大手企業の新築ホームは高額になりやすい一方、郊外や駅から少し離れた築年数の経ったホームでは費用を抑えられるなど、入居金や月額費用にはかなり幅が出てきます。
4. 【公的】介護医療院

特養で、医療依存度が高くて退去しなくてはいけない場合の一番多い転居先。
長期的な医療と介護の両方が必要な方向け。病院に近い機能を持つ施設。
入居金なし
月額費用10万〜25万円ほど
入居条件要介護1〜要介護5
(実際は要介護3以上が中心)
医師・看護師が常駐し、たん吸引・経管栄養などの医療ケアに対応。
長期療養が前提で看取り(ターミナルケア)にも対応可能。
病院ではないが、医療管理が必要な人の受け皿。
5. 自宅 (在宅介護・医療)

住みなれた自宅で医療と介護を受けながら生活する。
家族と一緒にいられるが、家族には医療機器の扱いや、急変時の対応など負担が大きくなりやすい。
公的保険の自己負担額は1万〜5万円ほど(医療費1〜3割負担+訪問回数により変動)
医師が定期的に訪問(訪問診療)し、体調管理や薬の調整を行う。
看護師による訪問看護で、点滴・褥瘡処置・たん吸引など医療ケアに対応。
介護士の定期訪問で排泄入浴、食事介助などの支援を受ける。
しかし、公的保険で賄える範囲には限りがあり、夜間や休日、予定に組み込まれていない突発的なことは全て家族でカバーしなくてはいけない。
自費の訪問看護・訪問介護という選択

公的保険制度以外のサービス
自費の訪問介護や看護『保険外サービス』をご存知ですか?
全額自己負担にはなりますが、
・好きな時間に
・必要な回数だけ
・内容も自由に組み立てられる
という、非常に自由度の高い支援です。
施設に入居した場合の月額費用と比べると使い方によってはリーズナブルに済む場合もあります。
家の中での介護や、生活支援のサービスはもちろんですが
家族の負担まで支えられることは自費介護・看護の大きな特徴です。
・週に一回でいいから、夜ゆっくり夜寝る時間を確保したい。
・通院の時だけ、車や診察台への乗り移りや、排泄の介助をお願いしたい。
・何があるか心配だから、ずっと24時間見ていてほしい。

などその人、その家族の希望に合わせた支援を組み立てる事が可能です。
大手自費訪問介護の比較表
大手5社を例に、料金設定が最も高い東京で、1回だけスポット利用した場合の料金を同じ条件で比較します。
| クラウドケア | イチロウ | ニチイ | ダスキン | ポピンズ | |
|---|---|---|---|---|---|
| 最低利用料 (交通費・税込) | 1時間 4,180円〜 | 2時間 8,470円〜 | 1時間 7,480円〜 | 2時間 11,770円〜 | 3時間 23,100円〜 |
| 1時間換算 | 4,180円/1時間 | 4,235円/1時間 | 7,480円/1時間 | 5,885円/1時間 | 7,700円/1時間 |
| 最短対応 | 1時間 | 5分 | 4日から エリアにより 7~10日かかる 場合も | 事前面談 当日も可能 | 調整制 |
| 対応エリア | 7都県 | 8都府県 | 39都道府県 | 23都道府県 | 9都府県+1市 |
最低利用時間や料金、対応スピード、エリアはサービスによって大きく異なります。
料金だけでなく、「必要なときに利用できるか」まで含めて比較しておくことが大切です。
介護保険外(自費)サービスを探されている方は参考にしてください⬇️

大手自費訪問看護の比較表
| アラジンケア | イチロウナース | プライベートナース | 日本 プライベート看護 | |
|---|---|---|---|---|
| 料金/時間 (税込) | 5,500円〜 | 6,600円〜 | 7,150円〜 | 7,700円〜 |
| 最低利用時間 | 4時間から | 2時間から | 4時間から | 4時間から |
| サービス開始 | 最短2日 | 最短当日 | 3〜5日 (毎日依頼の場合は2〜3週間) | 7日程度 |
| 提供サービス | 家事支援から 医療行為まで トータルで支援 | 家事支援から 医療行為まで トータルで支援 | 基本は医療処置と 排泄介助 | 家事支援から 医療行為まで トータルで支援 |
| 派遣看護師の 特徴 | 病棟勤務経験が 3年以上 | 病棟や訪問看護経験が平均13年以上 | 病棟勤務経験が 3年以上 | 病棟勤務経験が 3年以上 |
自費訪問看護は、料金だけでなく、看護師に任せられる支援の範囲や利用条件にも違いがあります。
医療処置だけでなく、介護や家事までまとめて任せたいのかも、サービスを選ぶポイントになります。
まとめ
介護って、分からないことが本当に多いですよね。
やっと特養に入居できたと思ったら、今度は長期入院。これからどうなるのか、費用はいくらかかるのか、家族にとっても不安の連続だと思います。
でも、「元の特養に戻る」だけが選択肢ではありません。
別の施設へ移る、自宅に戻る、介護保険サービスを使う、自費の介護や看護を組み合わせるなど、選べる道はいくつもあります。
選択肢を知っておくことが、本人にも家族にも無理の少ない介護を考えるきっかけになる。
この記事が、そのための一つの材料になればうれしいです。


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