その瞬間、電気が止まったら?
在宅酸素で酸素濃縮器を使用している方にとって、停電は命に関わる問題です。
東日本大震災では、実際に長時間の停電を経験した在宅療養者がいました。
この記事ではその事例をもとに、ポータブル電源は何Wh必要なのか、停電時に何時間使えるのか、選ぶ際に確認したいポイントをわかりやすく解説します。

在宅酸素は停電したらどうなる?3.11で起きたこと

三井住友海上福祉財団の研究では、東日本大震災を経験した在宅酸素療法(HOT)や人工呼吸器(NPPV)の使用者48人を対象に、停電時の状況が調査されています。
結果を見ると、特に重要なのは次の3点です。
- 26%:震災時に酸素供給装置・人工呼吸器が故障または停止
- 71%:外部バッテリーなどの予備電源を保有
- 0人:24時間以上使用できる予備電源を備蓄

予備電源を持っていた人は多かったものの、長時間の停電に対応できるだけの電源を確保していた人はいませんでした。
調査が行われた山形県では、停電によって高齢者の酸素濃縮器が停止し、死亡に至った事例も報告されています。
酸素ボンベについては供給事業者による支援も行われました。震災後には、酸素ボンベの備蓄や自家発電機の購入など、停電への備えを強化した人もいます。
在宅酸素の停電対策では、「予備電源を持っているか」だけではなく、「何時間使えるのか」まで考えておくことが重要です。
在宅酸素・人工呼吸器利用者が震災後に行った停電対策
調査では、震災を経験したことで、停電への備えを見直した人もいました。
具体的には、
- 電気式の酸素濃縮器から液体酸素へ変更
- 酸素ボンベを備蓄
- ポータブル電源などの自家発電機器を購入・追加
といった対策が行われています。
長時間の停電では影響を受けると回答した人が多かった一方、UPS(無停電電源装置)の認知度は低く、「予備電源を持っている」だけでなく、停電時に何時間使えるのかまで考えて備える必要性が見えてきます。
次に、酸素濃縮器を実際に動かすには、ポータブル電源がどのくらい必要なのかを見ていきます。
在宅酸素の停電対策にポータブル電源は何Wh必要?
在宅酸素でポータブル電源を使う場合、重要なのは「何Whあれば、酸素濃縮器を何時間動かせるか」です。
目安は、
ポータブル電源の容量(Wh)÷ 酸素濃縮器の消費電力(W)=稼働時間
で計算できます。
実際には変換ロスなどがあるため、ここでは容量の90%を使用できるものとして計算します。
1000Wh・2000Wh・3000Whで酸素濃縮器は何時間使える?
酸素濃縮器は、機種や設定する酸素流量によって消費電力が変わります。
たとえば、消費電力を1L/分=70W、3L/分=100W、5L/分=165Wとして計算すると、次のようになります。
| 酸素流量 | 消費電力 | 1000Wh | 2000Wh | 3000Wh |
|---|---|---|---|---|
| 1L/分 | 70W | 約12.8時間 | 約25.7時間 | 約38.6時間 |
| 3L/分 | 100W | 約9時間 | 約18時間 | 約27時間 |
| 5L/分 | 165W | 約5.5時間 | 約10.9時間 | 約16.4時間 |
※ポータブル電源の変換ロスを10%として計算した目安です。実際の稼働時間は、使用する酸素濃縮器やポータブル電源、使用環境などによって異なります。
1000Whあれば十分そうに見えますが、100Wの酸素濃縮器なら約9時間です。
2000Whでも約18時間。3000Whになると約27時間となり、ようやく24時間を超えます。
東日本大震災の調査で「24時間以上使用できる予備電源を備蓄していた人が0人だった」ことを考えても、長時間停電まで想定するなら、単にポータブル電源を持つだけでなく、何時間動かせるのかまで確認しておくことが重要です。
酸素流量は自己判断で変更しない

酸素流量が多くなるほど消費電力が大きくなる機種もあります。
それでも、停電時に電力を節約するために自己判断で酸素流量を下げるのは避けてください。
普段から主治医や医療機器事業者に、
「非常事態に限り、どれくらいまで下げられるか」
「血中酸素濃度が何%で戻すか」
などを確認しておくと、実際の停電時にも対応しやすくなります。
在宅酸素向けポータブル電源の選び方|確認するのは3つ
①容量(Wh)は停電時間から逆算する
ポータブル電源のWh(ワットアワー)は、どれだけ電気を蓄えられるかを示す容量です。電気をためておく「バケツの大きさ」と考えるとわかりやすいでしょう。

在宅医療の停電対策として選ぶなら、まずは1000Wh以上を目安に検討します。
前章で計算したように、1000Whでも酸素濃縮器を動かせるのは数時間〜半日程度です。長時間の停電まで想定するなら、2000Wh・3000Whも選択肢になります。
ただし、容量が大きくなるほど本体も重くなります。大容量モデルでは20〜30kg前後になるものもあるため、必要な稼働時間と、停電時に実際に扱える重さの両方を考えて選びましょう。

※実際に必要な容量は、使用する医療機器の消費電力や運用方法によって異なります。
②パススルー・UPS機能を確認する
在宅医療のバックアップ電源として使うなら、パススルーとUPS(無停電電源)機能も確認します。

パススルー機能がある製品では、ポータブル電源をコンセントにつないで充電しながら、接続した機器へ給電できます。
普段から接続しておける製品なら、停電だから持ち運んでくるといった特別な作業が必要ありません。

UPS機能は、停電を検知するとコンセントからの給電からバッテリー給電へ自動的に切り替える機能です。
切り替え時間やUPSとしての仕様は製品によって異なります。
「UPS搭載」と書かれているだけで判断せず、使用する医療機器が許容できる切り替え時間なのか、メーカーが想定する使用方法なのかまで確認してください。
③リン酸鉄リチウム電池・正弦波・出力を確認する
容量と停電時の切り替え方法を確認したら、最後に基本性能をチェックします。
リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)を採用した製品は、現在のポータブル電源で広く使われており、サイクル寿命の長い製品が多くあります。
医療機器を接続する場合は、
- AC出力が正弦波か
- 医療機器の消費電力に対して十分な定格出力があるか
- 日本仕様の100Vに対応しているか
- 国内で保証・サポートを受けられるか
を確認します。
非常時に使うものだからこそ、価格だけで選ばず、正規販売店から保証のある製品を購入する方が安心です。
ポータブル電源はリチウムイオン電池を使用しているため、一般ごみとして処分できない場合があります。購入前に、メーカーによる回収や廃棄時のサポートがあるかも確認しておくとよいでしょう。
在宅酸素におすすめのポータブル電源を容量別に比較

1000Whクラス|軽さとのバランス
- Jackery 1000 New:約10.8kg
- BLUETTI AORA 100:約16.4kg
1000Whクラスは、容量を確保しながら持ち運びやすさも重視したい場合の候補です。
2000Whクラス|1日程度の停電を意識
- Jackery 2000 New:約17.9kg
- BLUETTI AC200L:約28.3kg
1000Whでは不足する場合に検討したいクラス。酸素濃縮器の消費電力によっては24時間には届かないため、実際の機器で稼働時間を計算して選びます。
3000Whクラス|長時間停電を想定
- Jackery 3000 New:約27kg
- BLUETTI Apex 300 :約38kg
容量に余裕を持たせられる一方、重量が大きくなるため、設置場所や移動方法まで考えて選びます。
気になる容量が決まったら公式サイトで確認
株式会社Jackery_Japan(ジャクリ)
Jackery公式サイトで確認する →BLUETTI_JAPAN株式会社(ブルーティ)
24時間以上の停電に備えるなら電源を分散する
長期戦に備える場合はポータブル電源を2台以上所有することになります。
一台で医療機器を動かしている間に、別のポータブル電源をソーラーパネルや通電している場所へ運んで充電するという運用方法です。

このようにポータブル電源は電気を貯めるバケツだと考えたとき、充電するために持ち運ぶ必要があるわけですから闇雲に大きい容量で30kgクラスの商品が適しているかを考慮しなくてはなりません。
在宅酸素の停電対策はポータブル電源だけに頼らない
ポータブル電源は停電対策として心強いものですが、それだけで在宅酸素の備えが完了するわけではありません。
停電が長引けば、いずれポータブル電源の電気もなくなります。ソーラーパネルも天候によって十分に発電できないことがあります。
そのため、電気を確保する方法とあわせて、電気が使えなくなった場合の次の手段も準備しておきましょう。
酸素ボンベなど電気を使わない方法も確保する
酸素濃縮器は電気がなければ動きません。
停電時に使用できる携帯用の酸素ボンベの本数や使用可能時間、追加供給が必要になった場合の対応について、普段から医療機器業者に確認しておくと安心です。
特に確認しておきたいのは、「今ある酸素ボンベで何時間対応できるのか」です。
医療機器業者の連絡先はスマホ以外にも残す
停電時には、医療機器の不具合や酸素ボンベの追加について業者へ連絡する可能性があります。
主治医・医療機関・医療機器業者などの連絡先はスマホに登録するだけでなく、紙にも書いて医療機器の近くに置いておくと安心です。
医療機器以外に必要な電気も考えておく
停電時に必要なのは酸素濃縮器の電気だけではありません。
スマホは情報収集や連絡手段になりますし、夜間なら照明、夏や冬なら暑さ・寒さへの対策も必要です。
ポータブル電源の容量をすべて医療機器に使えるとは限らないため、「医療機器に必要な電力」と「生活を維持するための電力」を分けて考えることも大切です。
ポータブル電源は、在宅酸素の停電対策のひとつです。
医療機器に使う電力を優先し、それ以外はできるだけ電気を使わない備えに置き換えておく方法もあります。
たとえば、調理はカセットコンロ、照明は電池式ランタン、モバイルバッテリーも電池式などを準備しておけば、ポータブル電源の消費を抑えられます。
【充電&電池両用】LED ランタン 高輝度 1800ルーメン⬇️
単1〜単4形どれでも1本で使用可能なLED懐中電灯⬇️
ライトニングとType-Cの端子が選べます。モバイルバッテリー⬇️
介護ベッドも停電前に確認しておく
介護用ベッドは電動ですので、マットは停電した時の形のまま1㎜も動かす事ができません。
ベッド自体にも重さがあり、持ち上げるのは容易ではありません。
この様に、電源タップをいつでも操作できる状態かどうかで、ポータブル電源に繋げる労力が大きく変わることもありますのでぜひ参考になさってください。
まとめ|在宅酸素のポータブル電源は「何時間動かしたいか」から選ぶ
在宅酸素で酸素濃縮器を使用している場合、停電は「電気が使えなくて不便」というだけでは済みません。
今回見てきたように、1000Whのポータブル電源でも、酸素濃縮器を動かせるのは数時間〜半日程度になることがあります。
そのため、
- 必要な稼働時間から1000Wh・2000Wh・3000Whを検討する
- 停電時の切り替え方法やUPS・パススルー機能を確認する
- 長期停電なら2台運用やソーラー充電も考える
- 酸素ボンベなど電気を使わない備えも用意する
- 主治医・医療機器業者と停電時の対応を確認しておく
ことが大切です。
特に長時間の停電を想定するなら、ポータブル電源1台だけで何日も乗り切るのではなく、「使う・充電する・別の手段に切り替える」という複数の方法を組み合わせておく方が現実的です。
ポータブル電源を選ぶときも、「一番大容量なら安心」と考えるのではなく、自宅の酸素濃縮器を何時間動かしたいのか、停電時にその重さを実際に扱えるのかまで考えて選んでみてください。


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