停電で親を死なせないために。在宅酸素の命綱。【ポータブル電源】3.11で命の危機に直面した事例からの教訓

その瞬間、電気が止まったら?
停電は落雷・台風・地震・大雪だけでなく設備の老朽化や交通事故などでも起こる可能性があります。
吸引器、酸素濃縮器、電動ベッド、モニターなど「電気でしか動かないもの」が多い在宅介護者にとってはまさに、命の危機となります。
東日本大震災の時、在宅介護者はどのように過ごしたのでしょうか?
三井住友海上の調査から見たリアルな声を元に、非常用電源として必要なポータブル電源の情報をお伝えします。

この記事は、在宅医療機器(酸素濃縮器メイン)がある方に特化した内容です。
ポータブル電源は気になっているけど、あまり詳しくないし情報が多過ぎてどれがいいかわからない方に向けています。
停電時どれくらいの電源を確保すれば良いのか、在宅医療者特有の失敗しない選び方、普段の運用方法までお伝えします。
すでに持っているよ。という方にも役立つ情報が有りますのでぜひ最後までご覧ください。
東日本大震災の時、在宅酸素や、人工呼吸器の使用者はどう動いたのか
三井住友海上福祉財団による調査報告

⚫︎誰に何を聞いたか?
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、広範囲で長時間の停電が起こりました。
実際に震災を経験された、酸素濃縮器や人工呼吸器を自宅で使用している人に48人にアンケートを実施した物です。
回収率は31%
震災停電時を想定した在宅酸素療法(HOT)患者等の安定的な補助電源供給システムに関する研究
震災時に酸素供給装置、人工呼吸器が故障、停止したか?
HOT、NPPV が故障、停止した患者は 26%
およそ4人に1人の割合です。
予備の電源装置を持っていたか?
在宅酸素(HOT )および 人工呼吸器(NPPV )使用者の71%が、
外部バッテリー等の予備電源装置を持っていました。
一方、備蓄時間で見ると、
16~24時間以内で、24 時間以上備蓄している人は0人という結果でした。
調査が行われた山形県では、震災による停電で高齢者の酸素濃縮器が停止し、死亡に至った事案が報告されています。
酸素ボンベに関しては備蓄している人は25%でしたが、供給会社も動きが早く、
[帝人ファーマ]では、震災直後から、安否確認と酸素ボンベの供給が行われました。

補助電源に関する知識があったか?
75%の人が「ガス発電機」や「太陽光発電機」を使うと回答。
→ 多くの人が「補助電源があったら助かる」と思っています。
震災前後で意識変化があったか?
長時間(24 時間以上)、停電が起きた場合「影響を受ける」と回答した人は100%
UPS(無停電電源装置)を知ってる人はわずか13%
→ 機械名を知らない人がとても多い結果となりました。
被災した人たちが、震災後にやったこと
⚫︎電気式酸素供給装置から液体(液化)酸素へ変更した。
⚫︎酸素ボンベを備蓄した。
⚫︎自家発電機(ポータブル電源)を購入、または追加購入した。
等の回答があり、震災後の停電を想定して、なんらかの対策を立てたようです。


この調査のまとめ
HOT、NPPV が停電により故障、停止した患者は 26%と低く、
各機種の純正内部や、外部バッテリーが稼働し停電時に対応されていたことが要因。
長期の停電に関しては、影響があることを全員が意識していた。
UPS(無停電電源装置)は停電しても、すぐに電気を供給してくれる装置だということを知らない人が多かった。
震災を経験して、停電時の備えを強化した。
今現在、在宅酸素や人工呼吸器を使用しているご家庭で、非常用の電源(ポータブル電源)をお持ちでない方は、早めの準備が安心材料になります。
次の章では、ポータブル電源が必要なのは分かったけど、種類が多すぎるし、難しい言葉が多くて何を選んで良いのかいまいちピンとこない方に向けて
在宅医療機器を使う方に特化した商品選び、実際の普段の運用方法などをお伝えしていきます。
在宅医療者に向けたポータブル電源(非常用電源)の選び方

前提としては、避難所などへは行かずに自宅で避難する場合を想定しています。
どれを選べばいいの?
防災用とキャンプ用は別物なの?
難しい言葉は使わないで!
お任せください。
要点を3つに絞ってお話ししていきます。
①電池の話 【三元系とリン酸鉄】
ポータブル電源の中身は電気を貯めておく電池が詰まっています。
その電池が2種類ありますが、圧倒的に”リン酸鉄電池”をおすすめします。
もう一方の”三元系”は軽くて、エネルギーの密度が高いので便利ではありますが、衝撃や高温で発火する特徴があるので、地震で物が落ちてくるかもしれない状況で使用する想定の今回の場合はおすすめしません。
スマホ用モバイルバッテリー(充電パック)の発火事故は、三元系(NMC)またはコバルト系(LCO)のリチウムイオン電池が原因であることが多いです。
ポータブル電源は高価なものですが、メルカリなどで中古品を買わないでください。
● 製品の真贋が確認できない(偽物の可能性がある)
● 使用履歴や充放電回数がわからない
● バッテリーの劣化状態がわからない
● メーカー保証が適用されない可能性が高い
● 故障や不具合が発生した際のサポートが受けられない
型落ち品にも三元系の物が混ざっている可能性がありますし、安全に長く使うためにも、信頼できる正規販売店から保証付きの新品を購入するのがおすすめです。
聞いたこともないようなメーカーの安すぎる商品にも注意が必要です。
企業のホームページもなく、日本語サポートもない、電話も繋がらないような粗悪なメーカーがたくさん有りますのでお気をつけ下さい。
⚫︎捨てる時のこと忘れないでください
三元系・リン酸鉄系もともにリチウムイオン電池に含まれるため、
自治体による一般ゴミ回収は不可です。
「小型充電式電池回収ボックス」は30センチ以上の物は回収してくれません。
家電量販店でもリサイクルショップでも回収には対応してくれません。
メーカーで購入すれば、無料の自主回収サービスが使えますが、粗悪な物を手に入れてしまうと捨てさせてもらえなくなります。
②どのメーカーで買えば良いのか

激安や中古を買わないとしても、ではどのメーカーで買えば安心できるのか?
それは、既に実績と信頼を積み上げているメーカーです。
ポータブル電源市場 ・世界シェアTOP5は
- ゴールゼロ合同会社
- ジャックリー株式会社
- エコフロー
- アンカー・イノベーション・リミテッド
- Bluetti (シンセンPoweroak Newener Co.、株式会社) の5社で、アメリカと中国の会社がほとんどですが、日本支社がある企業も多いです。
市場調査データとコンサルティングを提供する信頼性の高い企業データインテロの調査

この中で処分時の回収が確認できないのはGOAL ZERO(ゴールゼロ)だけです。(2025.7現在)
その他の、Jackery、Anker、EcoFlow、BLUETTIなど主要メーカーは、自社製品の回収に対応しています。
- Jackery:日本国内品を専門業者でリサイクル回収
Chilltabi+9Jackery Japan+9ポタデンドットネット+9 - Anker:モバイルバッテリー・ポタ電を無償回収(送料負担)
ポタデンドットネット+2Anker Japan 公式オンラインストア+2Jackery Japan+2 - EcoFlow:専門業者による無償回収サービス開始
- BLUETTI:2024年1月からの自主回収・リサイクル開始
もちろん他にもいいメーカーや商品はたくさん有ります。
ですが、ポータブル電源にあまり詳しくない方であれば
「コンパクトサイズが魅力」や「10年使える長寿命設計」などの謳い文句に惑わされることなく、有名メーカーのものにすることをおすすめします。
在宅の医療機器がどれくらい稼働できるか、非常時にすぐさま使えるような運用方法ができるのかなどを重視して、他の小さな機能の比較などはしない方が選びやすいと考えています。
③必ず検討する必要のある項目 3つ
⚫︎Wh(ワットアワー)
⚫︎長期に電気を確保できるか
⚫︎パススルーとUPS機能
この3点を押さえておけば、後はデザインやコンセントの口数などはお好みに合わせて選んでいけます。
Wh(ワットアワー)とは
バッテリーの容量
電気を溜めておくバケツの大きさと考えてください
キャンプ用ではなく防災用と考えるのであれば、1000Wh(容量)以上の物をお勧めします。
500Whや700Whなどの小さい容量の物を買って、出力が足りず、在宅医療機器を動かすのを諦められる状態ではありませんので小さすぎるものは避けてください。
ただし、容量(バケツの大きさ)が大きくなると、重量がネックになってきますので慎重に選択してください。2000Whや3000Whの商品になると30kgほどの重さとなります。

長期に電気を確保できるか Whでの比較
人工呼吸器では内部・外部バッテリーがあるのでそのバッテリーを備蓄していれば、停電時でも継続して医療を継続できそうです。
機種名 | 消費電力(目安) | 内蔵バッテリー作動時間 | 外部バッテリー接続時(最大) |
---|---|---|---|
フィリップス トリロジー Evo | 約75W | 約6時間 | 約15時間 |
パシフィックメディコ LTV1200 | 約90W | 約1時間 | 約5時間 |
レズメド Astral 150 | 約50W | 約8時間 | 約24時間 |
在宅酸素では、酸素の流入量が大きいほど、電力の消費も大きくなります。
かかりつけ医に、非常事態の場合どれくらいまで酸素の流入量を下げても大丈夫か、血中酸素濃度が何%なら経過観察できるのかなどを相談しておくと良いでしょう。


ポータブル電源の容量÷電化製品の消費電力=使用できる時間 となりますので
停電した時に動かせる時間は以下ようになります。
酸素流量 | 消費電力 | 稼働時間(1000 Wh) | 実用目安 (ロス10%考慮) |
---|---|---|---|
1 L/分 | 70 W | 約14.3時間 | 約12.8時間 |
3 L/分 | 100 W | 約10時間 | 約9時間 |
5 L/分 | 165 W | 約6.1時間 | 約5.5時間 |
ここで衝撃の事実ですか、一番少ない1リットルの流入量でも半日しか持ちません。
それではもっと大きい2000Whや3000Whではどうでしょうか。
酸素流量 | 消費電力 | 稼働時間(2000 Wh) | 実用目安(ロス10%考慮) |
---|---|---|---|
1 L/分 | 70 W | 約28.6時間 | 約25.7時間 |
3 L/分 | 100 W | 約20時間 | 約18.0時間 |
5 L/分 | 165 W | 約12.1時間 | 約10.9時間 |
ここでやっと24時間を超える数値が出てきました。
酸素流量 | 消費電力 | 稼働時間(3000 Wh) | 実用目安(ロス10%考慮) |
---|---|---|---|
1 L/分 | 70 W | 約42.9時間 | 約38.6時間 |
3 L/分 | 100 W | 約30時間 | 約27.0時間 |
5 L/分 | 165 W | 約18.2時間 | 約16.4時間 |
停電が数分で収まれば小さな電力でも大丈夫ですが、長期に広範囲で停電することを想定するなら、大きい容量の商品の方が安心ですね。
停電時に、絶対に電気を確保したいものは在宅医療機器の他にもあります。
⚫︎スマホ1台 5〜30W 情報収集
⚫︎冷蔵庫 100~200W 中のものを腐らせないため
⚫︎扇風機 15~60W 水で体を拭いてから風を当てると効果的
⚫︎電気毛布 40~100W 少ない電力で効率的
⚫︎タンクレストイレ 300~700w(瞬間) 電気がないと流れない機種あり
ここからご自身の使用している機器の稼働時間を計算してバッテリー容量を選びましょう。
この他、電気以外で動かせるものはなるべく電気レスで動かす想定も大切です。
⚫︎カセットコンロでお湯を沸かす
⚫︎手回し式懐中電灯・ランタン
⚫︎固形燃料+メスティン
⚫︎ウォータータンク(蛇口付き)
⚫︎簡易トイレ(凝固剤付き)
などの準備も節電になります。
パススルーとUPS機能

パススルー機能は、コンセントから常に充電をしながら、在宅医療機に給電もできるという機能です。
入ってくる量と使う量のバランスに制限がありますが、酸素濃縮器や人工呼吸器であれば問題ありません。
パススルー機能がない商品では、平常時に80%に充電して、3ヶ月に一度放電と充電をするというメンテナンスを繰り返していかなければ非常時に使えません。
時々キャンプで使うために充電するような使い方でない今回、この機能は必須です。

UPS機能は、普段はコンセントから充電しつつ、ポータブル電源を通して医療機器に電気を流しているだけですが
いざ停電が起きると、瞬時に(0~数ミリ秒)バッテリー電源供給に切り替わる機能です。
給電を止めないので、電源断が致命的な医療機器には必須機能です。
パススルーとUPS機能は、在宅医療者にとって一番重要な要件です。
まず、この機能がついている物を選んでから、その他の細かい要件を吟味して欲しいです。
24時間以上(長期停電)を想定する場合
長期戦に備える場合はポータブル電源を2台以上所有することになります。
一方を電源として使用している間に、一方ではソーラーパネルで電気を作って溜めておく、もしくは電気が通っている所までポータブル電源を運んで急速で充電してくるという運用方法です。
このようにポータブル電源は電気を貯めるバケツだと考えたとき、充電するために持ち運ぶ必要があるわけですから闇雲に大きい容量で30kgクラスの商品が適しているかを考慮しなくてはなりません。
医療機器向け おすすめ大容量 ポータブル電源
ここから紹介する商品は全て在宅医療者に適している商品です。
以下の機能が全て揃った商品だけを6点ピックアップします。
⚫︎リン酸鉄電池
⚫︎1000Wh以上
⚫︎パススルー機能
⚫︎UPS機能
⚫︎出力波形は正弦波
⚫︎AC出力の電圧が日本仕様の100V
⚫︎ソーラーパネルで発電できる
⚫︎サポート・自主回収がある
商品ページに行ってみてください。ここでは全く紹介できなかった優れた機能が満載ですよ。
①Jackery ポータブル電源 1000 New
60万人以上に選ばれた大ヒット商品
1000Whクラスで最軽量の10.8Kg ↓

②Jackery 1000 New にソーラーパネルが付属した物です
パネルの枚数が1枚か2枚か選べます。
(最大4枚まで接続可能)
これで長期の停電でも発電できますね。 ↓

③BLUETTI AORA 100 防災推奨モデル
1000Whクラスです。
出力ポートが11搭載されています。
ソーラーパネル付きも選べますよ。重量は16.4kg ↓

④Jackery 2000 New
大容量でソーラーパネル付き
こちらも2000Whクラスで最小、最軽量モデルです。重量27.9Kg ↓

⑤BLUETTI AC200L
こちらも2000Whクラス 重量は28.3Kg ↓

⑥最後は3000Whクラス
Jackery ポータブル電源 3000 New セット
折りたたみ式のキャリーカートがついています。
2000Whと重量はほとんど変わらず27Kg ↓

2025.7.21新発売された1500Wh
1000Whと2000Whで迷われている方には朗報!
発売から1ヶ月間は30%オフのセールがあるそうです。

いかがでしたか?
もう色々な情報に惑わされず、本当に必要な機種がお分かりいただけたかと思います。
決して安いお買い物ではありませんが、毎年防災月(9月)の前は各社セールが開催されていますので、お得なタイミングでご購入されてみてはいかがでしょうか。
おまけ:介護用ベッド使用者の注意点
介護ベッドは電動ですので、停電した時の形のまま1㎜も動かす事ができません。
この様に、電源タップをいつでも操作できる状態かどうかで、ポータブル電源に繋げる労力が大きく変わることもありますのでぜひ参考になさってください。
まとめ
在宅医療で、絶対に電源を止めたくない機器をお持ちの方は、ポータブル電源の選び方がキャンプ用のそれとは異なります。
自宅の家電は後回しにしたり、何かに代替えができますが、医療機器はそのようにはできません。
最低必須の条件を兼ね備えた商品を厳選しましたので、ご活用いただければ嬉しいです。