保険外介護とは、「通院の付き添い」や、「夜中の長時間の見守り」など、公的な介護保険制度ではルール上できないことを柔軟に依頼できる存在として重宝されています。
そんな「自由度の高いサービス」というイメージが強い自費での介護ですが、実はできないこともあります。
もちろん提供する企業によって多少の違いはありますが、共通する部分も多く、厳格なルールが存在します。
なぜこれらが禁止されているのか、その理由を含めて解説します。
共通して、禁止されていること

医療行為および専門的な看護業務
自費サービスであっても、法律上の「医療行為」を無資格(または会社の許可なく)で行うことはできません。
これは医師法や保健師助産師看護師法などの法令に基づいています。
・具体的な禁止行為

注射、点滴の管理、床ずれ(褥瘡)の処置、経管栄養の管理、痰の吸引などが含まれます。
・身体への侵襲性・専門性が高いケア

浣腸や耳垢の除去、分厚くなった爪や巻き爪などの爪切りといった行為は、専門的な知識と技術が必要なため、原則として禁止されています。
これらは「医療行為」に準ずるものとみなされ、万が一の事故が起きた際、生命に関わる重大なリスクを伴うためです。

また、マッサージに関しても注意が必要です。
お客様が「痛い」「触って」とおっしゃる部位を優しくさすることは可能ですが、もっと強く押して欲しいなどの「マッサージ」や「あん摩」の行為は、国家資格(あん摩マッサージ指圧師等)を要する専門技術であるため、多くの会社で禁止されています。
良かれと思って行った強い力が、骨折や内出血などの思わぬケガを招く恐れがあるため、安全性を最優先してルール化されています。
往診や訪問看護などで医師や看護師に来てもらう対応となります。マッサージに関しても専門職への依頼が必要です。
危険を伴う高所作業や重量物の運搬

スタッフの安全確保と、お客様の家財の破損を防ぐためのルールです。
・高所作業
多くの会社では「膝以上の高さの台に乗っての作業」や「脚立の使用」を禁止事項として掲げています。
電球の取り替え自体は可能であっても、それが高所におよぶ場合はお断りせざるを得ません。
同様の理由から、庭木の剪定なども高所作業に該当するため、依頼は控える必要があります。
・重量物の運搬
模様替えに伴う大型家具の移動など、極端に重い荷物の持ち運びなどは提供範囲外です。
また介護の場面においても、お客様を抱きかかえての入浴介助などは、スタッフの身体的負担が「重量物」の扱いと同等とみなされ、お受けできないケースがあります。
スタッフの転倒や腰痛、壁や床の損傷といった重大な事故に繋がる可能性があるためです。
運転代行・車両による送迎

スタッフがお客様の車、あるいはスタッフ自身の車を運転することは原則として認められていません。
・禁止内容
通院の付き添いや買い物の際、スタッフが運転席に座ってハンドルを握る行為です。
自動車事故が発生した際の責任の所在が不明確になり、多額の賠償問題に発展するリスクがあるためです。
反対にお客様の運転する車にヘルパーが乗せてもらうことも禁止されています。(介護タクシーへの同乗は可能)
専門のドライバーを雇うか、公共交通機関やタクシーを併用するのが一般的です。
金銭・貴重品の取り扱い

金銭トラブルは、一度発生すると信頼関係を修復することが極めて困難です。そのため、最も厳格に運用されているルールの一つです。
・貴重品・重要書類の預かり禁止
預金通帳、印鑑、キャッシュカード、および年金手帳や保険証などの重要な証書をスタッフに預けることは一切できません。
また、日常生活の中で特にお客様からご要望が多いのが「家の鍵の預かり」です。
「長年来てくれて信頼しているから、鍵を渡して自由に出入りしてほしい」 「毎回、玄関を開け閉めするために立ち会うのが大変」
こうした使い勝手の良さを求めるお気持ちは十分に理解できますが、万が一の紛失や空き巣被害、あるいは「家の中のものがなくなった」といった疑いが生じた際、スタッフが責任を取ることができず、結果としてお客様に多大なご迷惑をかけてしまうのを防ぐためです。
・ 金銭の出し入れ・振り込み代理の禁止
スタッフが単独(ケアスタッフだけ)で金融機関へ足を運び、現金の入出金や振り込み作業を行うことは、どのような理由があっても厳禁です。
・同行は可能、ただしプライバシーは厳守
スタッフが金融機関への移動に付き添う(同行する)ことはサービスとして可能です。
しかし、ATM操作時にスタッフが代わりにボタンを操作して引き出すといった行為までは依頼できません。
これらの徹底した制限は、紛失、盗難、あるいは「使い込み」といった心ない疑いから、お客様とスタッフの双方を守るために設けられています。
スタッフとの「直接契約」は厳禁(引き抜きの禁止)
「いつも来てくれている○○さんなら安心だから、会社を通さずに安くお願いしたい」 「スタッフの方も、会社に手数料を取られない方が実入りがいいのでは?」
このように、良かれと思って、あるいはコストを抑えるために直接交渉を持ちかけたくなるかもしれません。
しかし、これはどの会社でも契約書で明確に禁止されており、実は利用者側にとって最もリスクが大きい行為ということを知っておいて欲しいです。
実際に筆者も直接契約を持ちかけられたことがあります。
大変親しくしてくださっていた方で、私を信頼してのお誘いだったため、その場の空気を壊したくない一心で連絡先の交換は拒むことができませんでした。
しかし、会社との契約がある以上、直接契約は受けることはできません。
もし会社に正直に話して、その方が支援を受けられなくなってしまったら…間違いなく生活が破綻するとわかっていたので、会社には黙っておいて、私だけが支援に入るのをやめました。
その後、会社から「その方が困っているので至急支援に入ってほしい」と要請があった際、連絡先を交換していた事、引き抜きを受けた事を正直に伝えました。
結果、会社からそのお客様へは厳重注意が入ることになり、その方はサービス自体が利用しづらくなってしまったかもしれません。私ももちろん厳重注意。結果的にお客様を助けることも、お会いすることもできなくなってしまいました。
どんなに親しい間柄でも、ルールを外れてしまうと、最終的に「一番助けが必要な方」がサービスを受けられなくなるという、最大の不利益を被ってしまうのです。
この行為は本当にいいことがほとんどないと感じています。その理由は
・万が一の事故の際、一切の補償がない
会社を通していれば、万が一の怪我や家財の破損に対して「損害賠償保険」が適用されます。
直接契約の場合、スタッフ個人に数千万円単位の賠償能力があることは稀で、結局は利用者側が泣き寝入りすることになります。
・トラブル発生時の仲裁者がいない
「お金を貸した・返さない」「頼んだはずのことがやっていない」といったトラブルが起きた際、会社という第三者がいなければ、すべて当事者同士で解決しなければなりません。
・スタッフの解雇やサービスの強制終了につながる
直接契約が発覚した場合、スタッフは違約金の発生や解雇処分を受けることが一般的です。結果として、信頼していたスタッフを失い、二度とその会社のサービスも受けられなくなるという、自分自身が一番損をする結末を招いてしまいます。
「お互いのために」というルールは、まさにこうした最悪の事態を防ぐために存在しています。
各企業によって「できる・できない」が分かれるケース

ここで、具体的でイメージしやすい例としてお掃除のケースを考えてみます。
介護保険外サービスを利用している中で迎える、年末の大掃除。
高齢になり、自分たちで高い場所にあるレンジフード(換気扇)を掃除するのは、体力的にどうしても難しくなってきました。
普段から利用している介護保険外サービスは、身体のケアだけでなく、買い物や郵便物の整理など、日々の困りごとに幅広く対応してくれて非常に助かっています。
「何でも相談に乗ってくれるから」と、その流れでレンジフードの掃除もお願いすることにしました。
「レンジフードのお掃除をお願いすることはできますか?」という質問に対し、
A社では「はい出来ます。」
B社では「申し訳ございませんが、お受けすることができません。」となる場合があります。
そこに、その企業の成り立ちやサービス体制が大きく関係してきます。
A社. 介護スタッフによる「家事の代行」としての対応
A社のようなケースでは、介護スタッフがご本人やご家族に代わり、ご自宅にある道具を使って清掃を行います。
これは「その家の人が行う掃除の代行」という位置づけです。
専門業者のような特殊な機材は使いませんが、「家族がやるのと同じレベルで、以前より綺麗になれば満足」という方にとっては、日常のケアの一環として柔軟に対応してもらえる点が大きなメリットとなります。
B社. プロの専門部署があるからこその制限(ダスキンの事例)
一方で、お掃除のプロとして名高いダスキンのような企業では、対応の考え方が異なります。
ダスキンには、エアコンや換気扇掃除の専門技術を持つ「サービスマスター」という部門があります。
もし、ダスキンの介護保険外サービス(ライフケア)のスタッフがレンジフードの分解清掃まで行ってしまうと、それは社内の専門部隊の仕事を奪うことになってしまいます。
また、お客様の側も「高い料金を払っているし、ダスキンなら、介護スタッフでもプロ並みにピカピカにしてくれるはず」という高い期待を持ちがちですが、介護スタッフと清掃専門スタッフでは、教育も所持している機材も異なります。
そのため、企業として「介護スタッフは日常の範囲まで。専門的な掃除は別部署のプロへ」と明確に役割を分けているのです。
満足度を高めるためのポイント
このように、もともと介護専業としてスタートした企業ではなく、本業(清掃・警備など)の強みを持ちながら介護保険外サービスを追加した企業では、部署間の線引きが厳密になされていることが多いのが特徴です。
以下に、他社では気軽に頼めるような内容でも、大手企業ゆえに「専門部署の領域」として制限される可能性がある具体的な例を挙げます。
どの企業も対応範囲については、最初の契約段階で必ず詳細な説明があります。
サービスが始まってから、いきなり『それはできません』と断られて戸惑うようなことはありませんので、ご安心ください。
ダスキン(レンジフード・エアコン掃除)
清掃のプロである「サービスマスター」部門があるため、介護スタッフは日常の家事の範囲を超えた分解清掃などは行えません。専門分野へ別の依頼と契約が必要になります。
ポピンズ(シッター業務)
教育・保育の「ナニー」や「ペットシッター」の専門組織を擁しているため、介護スタッフが片手間にお子様やペットの世話を請け負うことは、安全管理と品質維持の観点から制限されています。
セコム・ALSOK(防犯・防災診断)
防犯のプロとして、資格を持つ専門員が診断を行う体制があるため、介護スタッフが独自の判断で家の防犯アドバイスを行うことは出来ません。
ベネッセ(学習指導)
教育事業が本業であるため、学習支援は「塾」や「通信教育」の領域となります。介護スタッフが個人的にお孫さんの宿題を教えるといった行為は、教育サービスの品質管理上、行わないルールです。
SOMPOケア(保険の相談)
グループ内に損害保険会社を持つため、具体的な保険の見直しなどは資格を持ったプロの領域です。法的なコンプライアンスを守るため、介護スタッフが相談に乗ることはできません。
あまり介護の現場で頼まれそうにない例もありますが、保険外の介護サービスは自由度が高く、「なんでも依頼できる」というのが最大の特徴となります。
ですので、「こんなことまで頼んでいいのかしら?」と迷うようなことでも、まずは遠慮なく相談してみるのが正解です。
まとめ
介護保険外サービスは、「自費だから何でもできる」というわけではなく、医療行為や危険を伴う作業、金銭管理など、明確に禁止されていることも多くあります。
これらは、利用者さんとスタッフの双方を守るために設けられた、大切なルールです。
また、同じ「介護保険外サービス」でも、企業の成り立ちや体制によって、対応できる範囲は大きく異なります。
介護専業の会社と、本業に専門部署を持つ大手企業とでは、考え方や線引きが違うのは自然なことです。
だからこそ大切なのは、「何ができるか・できないか」を事前に知ったうえで、自分たちの希望や状況に合ったサービスを選ぶこと。
もし、「どの会社を選べばいいのか分からない」
「違いを比較してから検討したい」と感じた方は、以下の記事も参考にしてみてください。
介護保険外サービスのおすすめランキングと特徴を比較した記事はこちら ⬇️

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