公表データの向こう側を読む!介護施設の本当の姿を見抜く方法


情報公表システムで調べても、正直どの施設も同じに見えて…
何をどう比較していいかわからないんだよなあ
この情報は使える情報なのかな?
このように感じる方はいませんか?
この記事では、必ず記載されている内容を元に比較したり参考にできる内容を4点に絞って解説しています。
公の情報・施設HPやパンフレット・実際の見学を組み合わせて、施設を利用する前でも、どの様な施設かを見抜くことはできます。
☑️この記事でわかること
- 都道府県が公表している「介護サービス情報」を検索する方法
- 情報の読み解き方

情報公表システムとは
制度導入の背景
介護保険法に基づき、平成18年4月からスタートした制度で、利用者が介護サービスや事業所・施設を比較・検討して適切に選ぶための情報を都道府県が提供するしくみです。

この「介護サービス情報公表システム」を使って、インターネットでいつでも誰でも気軽に情報を入手することができます。
現在、全国約21万か所の「介護サービス事業所」の情報が検索・閲覧可能です。
どんな事業所が該当するの?
すべての介護サービス事業所※特例あり(施設・在宅サービスを含む)が対象です。
事業所は年一回の定期報告を都道府県に行います。
都道府県はその報告内容を確認して、必要な場合には調査(第三者評価)をして介護サービス情報公表システムに公表するという仕組みです。
※都市型軽費老人ホームは、介護保険サービスを提供する施設ではなく、老人福祉法に基づく施設であるため、介護サービス情報公表システムの主な対象外となっています。
何が書かれているの?
公表されている事業所情報の内容
名称や住所、提供しているサービス内容などの基本的な情報と
体制や取り組みなどの管理運営の情報とに大別する事ができます。
このほかに、努力義務である「第三者評価」※後述しますという訪問調査を受審しているかどうかも知る事ができます。
情公表システムの検索方法
介護サービス情報公表システムと検索して

自分の調べたい施設のある都道府県を選択します。
今回は例として東京都の画面で進めます。

介護事業所を選択すると条件にあった施設などを探す事ができます。

入居施設に絞って検索していきます。
サービスを受けたい地域を選択して下にスクロール「検索」をクリック

上記の赤枠には施設の種類が記されています。
施設の種類
サービスの種類 | 通称 | 対象者 | 主な特徴 | 経営母体 |
介護老人福祉施設 | 特養 (特別養護老人ホーム) | 原則介護度3以上 | 常時介護が必要な高齢者向け 生活全般の支援 | 公的施設 |
介護老人保健施設 | 老健 (老人保健施設) | 要介護者 | 病院退院後、在宅復帰を目指す。介護と医療の一体的提供 | 公的施設 |
特定施設入所者生活介護 | 有料 (有料老人ホーム) | 要介護者 (自立でも入居できるところはある) | 利用権方式が多い 自立から介護者まで幅広いが、スケジュールは施設が管理 | 民間施設 |
〃 | サ高住 (サービス付き高齢者向け住宅) | 要介護者 (60歳以上ならOKのところもある) | 賃貸借契約 自立度が高い 外出や自炊が自由 | 民間施設 |
グループホーム | 認知症の要介護者 | 少人数での共同生活家庭的な雰囲気で認知症ケア | 民間施設 | |
地域老人福祉施設 | 29人以下の特養 | 原則介護度3以上 | 原則として同じ市町村の住民のみ | 公的施設 |
「詳細情報を見る」をクリックすると各施設の情報が見られます。
情報量が多いうえ、フォーマットは同じでも各施設で登録されている内容は異なるため、比較が難しいかもしれません。
どの施設でも必ず記載されている項目を中心に、
見落としがちな読み解きポイントや比較に使える視点をわかりやすく解説していきます。
読み解き方
1運営状況:レーダーチャート
詳細情報を見るをクリックするとまず、運営状況:レーダーチャートが表示されます

青い枠がその都道府県の平均で、赤い枠が該当施設の結果です。
もちろん赤い枠が大きい方が施設運営の体制が整っていると言えます。
これは管理者サイドの努力で結果が変わる項目で、現場職員はこの内容を知らずに働いていることも多くあります。
どのようにこの点数が決まっているのかは「運営状況」をクリックすると詳細が出てきます

2従業員情報
② 従業員情報|離職率は「低いから安心」とは限らない
介護業界は、意外にも全産業平均より離職率が低いとされています。
最新データ(2023年)では
- 介護職全体の離職率:13.1%(介護労働実態調査)
- 特別養護老人ホーム(特養):11.9%
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど):17.8%
参考:厚生労働省「雇用動向調査」では、全産業の平均離職率は15.4%となっており、
業界全体で見れば介護職の離職率は比較的安定しているとも言えます。
厚生労働省の雇用動向調査結果
離職率はこう計算されます

実際の施設情報の中では、「離職率」の欄に次のような数式で記載されています。
離職率 =(離職者数 ÷ 起算日時点の職員数)× 100
例えば、職員が67名いる施設で、昨年10人が退職していた場合:
(10 ÷ 67)×100 = 14.93%
この数字だけを見ると、
- 特養ならやや高め
- 有料老人ホームならやや低め
といった印象になるかもしれません。
しかし、ここで注意すべき大事なポイントがあります。
💡 離職率には「派遣職員」が含まれていない!
ここでの離職率の数値は、常勤・非常勤の直接雇用職員のみが対象です。
つまり、派遣職員の離職はカウントされていないということ。
しかし、実際の現場では…
「職員の4割が派遣だった」という施設も珍しくありません。
人手不足が深刻な介護業界では、派遣職員が現場を支える重要な存在となっているのが実情です。
📌あわせて読みたい 実録。有料老人ホーム潜入レポート 新しい施設でも安心できない理由
数字の“裏”を読む:離職率の活用方法
離職率が高い施設には、
- 人間関係のトラブル
- 業務過多や教育体制の不備
など、働きづらい要因が潜んでいる可能性があります。
一方で、低すぎる数字にも注意が必要です。
前述のように、派遣職員の実態を反映していないケースが多いため、見かけより実際の流動性は高いことも。
ベテラン職員の割合も要チェック
公表されている施設データには、
「勤務年数5年以上」「10年以上」の介護職員の割合も掲載されている場合があります。
これは、施設の職場環境や定着率を見る上での信頼性の指標になります。
ベテラン職員が多く在籍している施設は、教育体制や人間関係が安定している傾向があるため、ぜひ確認しておきましょう。
3利用者情報
「特養の待機者数」はあてにならない?|数字のカラクリと本当の優先順位

特養は申し込んでから入居できるまでに何年もかかるというでしょ?待機者の数は気になる数字だな
待機者は ●利用者情報 の項目に記載されています

厚生労働省が発表した**「特別養護老人ホーム入所申込者の状況(2022年)」によると、
2022年4月時点の待機者数は約27.5万人。
これは、ピーク時の2013年(52万人)と比べれば解消傾向にあります。
とはいえ、ネットで目にした自分の希望する施設の待機者数が300人超となっていたら……
「もう無理かもしれない」と落胆してしまう方も多いのではないでしょうか。
でも、その数字に振り回される必要はありません。
待機者が300人いても、あなたが“その施設に必要な人”なら入れる
現実には、待機者数が何人いてもそれ自体は大きな意味を持ちません。
本当に見られているのは次の2点だけ:
- 緊急性が高いか(要介護度や介護困難状況)
- 施設側が「この人に入ってほしい」と思う状況かどうか
つまり、306人の待機者がいても、あなたが1番に入れることもあり得るのです。
施設にとって「空床=赤字」。だから早めの段取りがカギ
特養(特別養護老人ホーム)は、ベッドが満床でやっと採算がとれる仕組み。
空床が出ると即赤字になるため、「空きを長く空けておく余裕」は基本的にありません。
そのため、施設側は
「今は満床だけど、この方には早く入ってほしい」
という申込者がいた場合、ベッドが空く前から連絡・面談・書類手配を進めておくのです。
私が生活相談員として働いていた頃も、
“本当に来てほしい人”には、まだ空きがないうちから連絡をして入居準備を進めていました。
表示されている「待機者数」は、実際の順番とは別物
ネットなどに掲載されている「待機者数」は、
いわば「申し込みだけして、選考で見送りになった人たちの合計」のようなものです。
本当の意味での「今、入居に向けて動いている人の数」とは一致していません。
なぜ待機者数が膨らむのか?――申込システムの盲点
待機者数が多く見える理由の一つが、
自治体の「一括申し込みシステム」です。
多くの自治体では、一度に複数の施設に申し込みができる仕組みを採用しており、
「とりあえず保険として申し込む」という方が非常に多くなっています。
たとえば:
- 「介護度3が出たし、まだ必要ないけど今のうちに申し込んでおこう」
- 「先の話だけど順番待ちしておけば数年後には入れるだろう」
こうした申し込みが実際には必要ないタイミングで行われ、数に含まれているのです。
生活相談員としてよくあった“待機者あるある”
私が相談員として施設から電話をかけていたとき、こんなやりとりは日常茶飯事でした。
「ええ、申し込んだ覚えはありますが……施設の場所ってどこでしたっけ?」
「もう順番が来たんですか?まだ家で看られるので大丈夫です」
このように、本気で入居を考えていない人が待機者に含まれているケースが非常に多いため、
表示されている待機者数は、実態よりも何倍にも膨らんで見えるのです。
④ その他|第三者評価の実施状況と読み解き方
第三者評価とは?ざっくり説明第三者評価等の実施状況
第三者評価等の実施状況

介護サービス情報公表制度の「その他」の項目には、
その施設が「第三者評価」を受けているかどうか、また結果を公開しているかが記載されています。
施設が自ら費用を支払い、外部の専門調査員に施設運営の質を評価してもらい、
結果を報告書として公表する仕組みです。
評価の目的は次の3点:
- 施設自身が課題を把握するため
- 入居希望者・家族への情報提供
- 介護サービス全体の質の向上
評価方法は?何をしているの?
- 書面調査:施設が事前に提出した資料をもとに運営状況を確認
- 実地調査:評価調査者(専門スタッフ)が1〜2日間かけて施設を訪問し、
- 入居者への聞き取り
- 職員の対応観察
- 食事体験(同じ食事を摂る)
などを行います。
実施率は?有料老人ホームは少なめ
第三者評価の実施は任意であり、法的義務ではありません。
特別養護老人ホーム(特養)では実施率が高い傾向にありますが、
有料老人ホームでは実施していないケースが多いのが実情です。
評価結果の探し方|掲載場所と検索のコツ
評価を実施している施設の場合、結果は多くが公式ホームページ内に掲載されています。
「情報公開」や「お知らせ」ページにPDFファイルで載っていることが多いですが、
リンク切れや非表示になっている場合も少なくありません。
その場合は以下の手順がおすすめです:
🔍 検索のしかた
「○○県(お住まいの都道府県) 第三者評価 結果一覧」
で検索すると、各都道府県の評価情報一覧にたどり着ける可能性があります。
どうしても見つからない場合は、施設に直接問い合わせるのが確実です。
結果のどこを見ればいい?|「全体講評」に注目!
評価結果の中で最も重要なのが、冒頭にある「全体の評価講評」です。
- 特に優れている点
- 今後改善が求められる点
が、施設の実情に即して具体的に記載されています。
この講評は、施設側が自己申告した内容をもとに、評価調査者が実地調査で確認した結果を反映しているため、
信頼性が高く、施設の性格や価値観が読み取れる貴重な部分です。
同じように見える施設でも、評価講評を読むと「ここの施設は丁寧だな」「この施設は改善意欲があるな」といった違いがはっきりと感じられます。
都道府県ごとに評価の細部は異なる
第三者評価の実施基準は都道府県ごとに若干異なります。
とはいえ、「書面調査+実地調査+入居者の声を聞く」という構成は共通です。
調査を行うのは、「評価調査者」と呼ばれる有資格の専門員。
公平性・中立性を保ちながら、施設内の雰囲気・ケアの質・運営体制を総合的に評価しています。
利用者アンケートの結果は“本音”とは限らない
調査対象となるのは認知機能がしっかりしている入居者さんですが、
実際には本音を話す方は少ないと感じます。
介護士として働いていた頃も、
- あくびを我慢する
- 排便で謝る
- 体勢を変えてほしくても言い出せない
そんな遠慮深い方が多かったのを思い出します。
外部から来た調査員に対して、
「私は幸せに暮らしています」と答えるのは自然な流れで、
本当の不満までは表に出にくいのが実情です。
評価結果では、生活面の項目は高評価でも、
- 利用者同士の関係性
- ケア計画への関与
- 第三者相談の認知度
などの後半項目になると、一気に満足度が下がる傾向があります。
施設ごとの差はあるものの、どこも似たような傾向が見られる印象です。
まとめ|「施設選び」に使える確かな情報を見抜くために
この記事では、介護サービス情報公表システムの使い方と、
そこに記載された情報の見方・活かし方を、現場経験をもとに解説してきました。
✔ この記事で解説した重要ポイント
- レーダーチャートは、赤枠が大きいほど評価が高い
- 離職率の数値は直接雇用職員のみ。派遣職員は含まれていない
- 待機者数は目安にならない。本当に大事なのは緊急性と施設の判断
- 第三者評価は「総評」を読むべき。施設の本音と実態が見えてくる
ご家族様が短時間でも施設の特徴を見抜けるように、私自身、実際に複数施設で働いて情報を発信しています。
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