1日働いて驚いた。こんな施設には親を入れたくない。


施設を見学には行きたいけど、どの施設がいいのかわかりません
どうせなら新しくできた施設の方がいい気がします
この記事は開設して3年以内のピカピカの有料老人ホームに
介護士として110時間以上勤務した短期バイトの経験の共有です
☑️この記事でわかること
- 日勤帯フロアでの様子
- 入浴時の様子
- 入居者の語る話
- 勤務している職員が語る話
- ベテラン介護士から見たこの施設の特徴
- 総評

前提
私が働いた地域の人口は69万人。
高齢化率は21.3%で、約5人に1人が高齢者。
特養と有料老人ホームの数は150件以上。
その中のひとつ
有料老人ホーム(利益を出すのが目的の民間企業)での潜入実録レポートです。
どこの施設かが特定されることは望んでいませんので、その可能性がある場合は少し数字を変更していますが、全て私自身が経験した事実であり私的な表現であることご理解お願いします。
施設概要
母体は会社設立から10年で11件の有料老人ホームを開設しています。(全て関東)
その中で一番新しくオープンした施設。
リゾートホテルをイメージした作りで、すぐそばにある公園を活かして外気浴に力を入れているとのことです。
入居率70%台
第一印象
初出勤日
綺麗なエントランスに通されましたが
女性用の更衣室に入ると、すぐに嫌な予感がしました。

絶対ダメな方の施設だなここは。と思いましたが決めつけてはいけません。
もしこのロッカールームが施設全体を表しているとしたら、それをなんとか外側から見抜く方法を見つけなくてはと、むしろやる気が増しました。
日勤帯の介護現場の様子

働いたフロアは2ヶ所
特別なこと以外は自分で判断できそうな人(認知症)が多いフロアと
自身では動けない状態の人(介護度が高い)が多いフロアです。
そのどちらでも、レクレーションはおろか職員が入居者全員に向かって話すことがないことに驚きました。
食事メニュー発表。今日は何の日?。口腔体操。軽いストレッチ。映画鑑賞会。塗り絵。など全く何も起こらず入居者はただただフロアに座っているだけで一日過ごしていました。
1日だけ副施設長が欠勤職員の代わりとして、フロアに勤務した事があるのですが、その日だけは普段寝かせっきりの入居者さんが車椅子に乗ってテレビの前に集合していましたし、毎食前に口腔体操のDVDを流していました。
本来はこのように指導されているけど、上司の見ていないところでは実施されていないということだと思います。
認知症の徘徊者
他の人の部屋に入った認知症の方に脅すような言葉遣いをする職員がいました。
「何度言ったらわかるの。そこはあなたの部屋じゃないでしょ。今度やったら許さないよ。」と誰でも聞こえる場所で強く叱責したのです。
きっとこの職員は認知症を分からないまま介護士をしているのだと思います。
なぜなら、
何度言ったらわかるの?→何度言っても忘れてしまう病気なんです。
そこはあなたの部屋じゃないでしょ!→ちゃんと理由があってその部屋に入っています。
今度やったら許さないよ→数分後にはきっと同じことをします。
この事実が理解できない担当介護士は毎回イライラするか、我慢するしか出来ませんので、知識不足の介護士も可哀想です。
施設内で介護士に対する勉強会「認知症」や「怒りのマネジメント」が行われているのか気になりました。
夜勤介護士
夜勤介護士から仕事を引き継いで1時間後
ある入居者さんをトイレに連れて行きました。
おしっこが紙パンツから漏れて洋服も濡れていたので着替えをしましたが、
濡れている場所が問題でした。
この方は長らくフロアに座っておられたにも関わらず、寝た姿勢でしか漏れない場所が濡れていて、分厚い上着にもおしっこがついていたのです。

フロアに座るような分厚い上着を着た状態で、横になっていたということがわかります。
靴下は片方で、ご本人は普通に機嫌よく過ごされていました。
自分で足先を触れる身体能力はないので介護士しかこの状態は作れません。

別の日、寝る準備を任された時は、夜用のおむつの上にその日はいていた昼用のリハビリパンツを履かせて、パジャマに着替えずそのまま寝かせて下さい。と指示を受けました。
この方は自分で訴えることができるので着替えをしないのは本人様の希望かもしれませんが、
本来はおむつの上に昼用のパンツを重ねて履くことは正しい使い方ではないので、夜勤者が楽をするための技かも知れないなと私は思いました。
(これをすることでズボンの脱ぎ着をする介助が一回分約3分位減ります。何人も同じ人を作れば介護士の自由な時間は増えますよね。)
もっと別のきちんとした理由があるのかもしれませんが、皮膚トラブル防止や、安眠妨害、尊厳の侵害などを理由におむつの上にリハビリパンツを履かせる行為を禁止している施設があることは事実です。
お風呂での様子

こちらの施設ではお風呂専門の担当者が数名いて
入浴実施日が週5日なので、毎回同じ職員でいつも同じ様な雰囲気でした。
設備としては大きな空間に、各種のお風呂
- 自分で浴槽をまたげる人が入る=家庭浴(一般浴)
- トイレには行けるけど浴槽はまたげない人が入る=チェアー浴
- 立つことが難しく普段からオムツの人が入る=ストレッチャー(寝台)浴
が備えてありました。
一つ一つのお風呂は壁や扉で仕切られていて、脱衣所ではパーテーションを使用していました。浴室に入ると介護士と入居者さんは1対1になります。
入居者さんからするとプライバシーは、守られていると思いますが
私の視点では、「悪くない」という印象です。
町の大衆浴場のような状態で入居者さん同士裸は見えちゃうけど、必ず2人以上の介護士が同じ空間内にいる環境下の方が介護の質が保たれます。
ケガの発見、肌の保湿、声かけ、動作の丁寧さ、困った時の助け合い、
自分以外の介護士の目があった方が全てにおいてクオリティが上がるのです。
お風呂での分析としては、内出血や不自然なケガをしている人はなく、
保湿剤の持参がない方には共用のものが用意されていて、
足の指の間など汚れが溜まりがちな箇所も清潔でした。
髪を乾かすのも充分で
全体的に丁寧な入浴介助をする施設だと感じました。
入居者の語る話

外気浴
施設のホームページでは外気欲に力を入れているとのことだったので、普通に会話ができて記憶が保てる入居者さん3名にそれぞれ二人きりの時に話を聞いてみると
「外気浴はしていない。」「家族が来なければ外に行く機会などない。」とのことでした。
桜の季節にも出かけないの?と尋ねると、少し玄関を出ただけよ。あんなの出かけたとは言わないわ。と仰っていました。
無言の介護士
お部屋からナースコールが鳴り伺うと、お手洗いに座って用を足し終わった入居者さんがおられました。
「長く座ったけど便は出なかった」とのことです。
「ごめんね」と仰るので「いいですよ」と答えると「そう言ってくれると嬉しいよ」と堰を切ったように話し始めました。
相槌を入れながらしばらくの間、耳を傾けます。
普通の会話でこんなに喜んでもらえることが不思議ですが、
何にも喋らないで無言で仕事する介護士がいて、それが悲しいとのこと。
「この仕事する人が皆あんたみたいにしてくれたらいいのに。」と。
私は一日単位でのバイトです。誰にでもできる仕事しか出来ないので責任は軽いですし、心の余裕や時間があります。職員さんは責任もやることも山積みですからなかなかゆっくりとお話ししたりは出来ませんので、その様に感じてお話をしてくれたのだと思いますが、最後は手を握って離してくれないので困りました。
入居中のみなさん、本当はたくさん話を聞いてもらいたいんですよね。
勤務している職員が語る話

事前に調べた厚生労働省の介護サービス情報公表システムやネット情報の内容で
次の点を確認したくて介護の正職員に質問しました。
- 離職率の正確性を確かめるため派遣職員はいるか?
- 売りにしている外気浴を行っているか?
- ホームページに載っているレクレーションは実施しているか?
- 退去率が高い理由は何か?
- レーダーチャートの研修の項目のポイントがよくないが勉強会はあるか?
①派遣職員はいるか?
質問した職員の方が勤務表を指差して「ほとんどが派遣だよ」
と言いました。数えてみると派遣職員の割合は41.7%でした。
②外気浴を行っているか
全く行っていないとのことで入居者の話と一致していました。
③特別レクレーションは実施されているか
ホームページに気になるレクを発見しました。外気浴とは異なるものだったので興味があり聞いてみました。
すると月一回定例で行われていて、入居者からは「高い」と言われているそうです。
価格に不満はあるものの、楽しみにしていて毎回参加される方が多いとのこと。
内容を詳しく書くことはできませんが、外のサービスを施設内にそのまま持って来るもので費用がかかるため、施設がそれで儲けているようには見えませんでした。
④退去理由は何か
この施設は介護度が軽い方が多いのですが、昨年1年間の退去者が53%だったので、半数以上の方が一年で入れ替わったことになります。退去の理由が気になり尋ねてみましたが、看取り(老衰や病気)との答えでした。こんなに介護度が軽いのに…うーん納得できない。
同じ地域の有料老人ホーム(44件)での平均は25.9%で、
この施設は地域で2番目の退去率でした。
別の看護師と介護士に同じ質問をしてみると、死亡や入院を一番に挙げつつ、特養に転居する方もいるとのこと。
特別養護老人ホームの入居待ちに有料老人ホームが使われているため、退去率が高くても問題ではないことがわかりました。
⑤勉強会
認知症の方への接し方を始め様々な勉強会が働く人の知識を深め、全体のスキルを上げますので、勉強会の有無は大切な判断基準になります。
この施設は勉強会を開催しても人が集まらないため、やっていないも同然とのことでした。
同様に職員で運営する委員会も機能していないそうです。
正職員と派遣職員に聞きましたが派遣職員はそもそも勉強会は開催されていないとの認識でした。
実施しても集まらないということから、上司の力が不足している。か、ルールを守らなくても大丈夫な風潮があるのだと分析します。
ベテラン介護士から見たこの施設の特徴

⚫︎職員同士のコミュニケーション
必要な会話はしますが、あまり会話が弾んでいる様子はなく個々の仕事をしている印象です。仕事終わりも一人にだけ挨拶したらスッといなくなる感じで連携が取れている感じはしませんでした。
必ず愛のある介護士に出会えると思って通ううちに、一人素敵な介護士さんを発見しちゃいました。
心底この仕事が好きそうで、入居者さんがおやつを選ぶ姿を見て「可愛い瞬間ですよね」と言って目尻を下げたり、認知症で立ち上がりが頻回な方には時間をかけて、お散歩に付き合ったりして、とにかくよく笑う方でした。
⚫︎鳴り物
ベッドから起き上がった事がわかるセンサーと、車椅子から立ち上がった事がわかるセンサーの使用がありました。
お部屋からのナースコールや職員同士の連絡が取れるPHSはフロアに1台。放置されていることもあり、誰が責任を持っているのか分かりませんでした。
この他にトランシーバーが一台。事務所やお風呂場など離れた場所や各種専門職と話ができるので連携に役立ちましたが、これも放置されていることがほとんどでした。
⚫︎排泄物の匂い
管理は特にされておらずビニール袋に入れて普通のゴミ箱に捨てていましたが施設内に匂いはしませんでした。
⚫︎オムツは誰が準備するのか
オムツやリハビリパンツ、尿を吸収する尿取りパットはご家族様が購入して持ち込む様でした。
パットは用途によって大きさや種類がいくつかあるのですが、
立ってトイレに行けず、オムツを使用している方は夜用パットだけを使用してる様でした。(在庫が夜用しかない)
一般的には昼間はおしっこの量が少なく、夜に多くなります。


昼間に費用のかさむ特大パットを少しの汚れで毎回交換するのはすごくもったいなく感じました。
⚫︎バルーンカテーテル
管を膀胱に入れて、尿を体外に出して溜めておくための医療器具の使用者が5名おられました。

医療や介護の従事者はその方の健康状態が知りたいので、左のイラストの様に尿が丸見えでも何とも思いません。
「自分のおしっこなんて絶対人に見られたくない」という羞恥心がいつの間にか分からなくなってしまうのですね。
この施設では全員が尿丸出しでみんなの集まるフロアでお食事をされていました。
右のイラストの様にバックに専用のカバーを準備している施設はたくさんあります。
これも感染症の観点から使用は望ましくないとの声もあるのですが、
使い捨ての清潔な白ビニール袋でも何でもいいので、尿の入ったバックを隠そうとする気持ちが欲しいなと感じました。
⚫︎個人情報
どの施設でも短期間のバイト用に、入居者の最低限の個人情報を紙ベースで準備してあります。
それを見ながら勤務して、帰りにお返しするのが普通なのですが
この施設は毎回持ち帰っても何も言われませんでした。
この事は「個人情報を施設の外に持ち出しては行けない」と感じる職員がこの施設にはいない(少ない)という事になります。
この様な小さな事の積み重ねが、意識しないうちに施設の文化や風土を作るのだと思います。
総評
この施設にはまだ、知っている人を入居させたくはないです。
体制が脆弱で、施設の文化として職員(主にフロア担当の)入居者に対する尊厳や愛を育てている途中と結論付けます。
あわせて読みたい老人ホームに入居する事を決めた今!ミスマッチを減らす方法 の
チェックリストも載せておきます
入居者の様子 | 肌の保湿 | 肌が乾燥していないか全体に確認 | ◯ | 乾燥している人はいません |
髪の毛 | 髪の毛が整っているか | ◯ | みなさん整っています | |
膝掛けや上着 | 適切な服装で過ごしているか | ◯ | ご自身でできる(言える)方が多い | |
好きなところにいる | 自由に移動できる環境があるか | ❌ | 全員が同じ場所にいる。動けない人は長く同じ場所にいることが多い。 | |
職員の様子 | どこを向いているか | 入居者の見守りができる位置で作業しているか | ❌ | 背を向けた位置や、座ると入居者が見えない位置で作業している。 |
無駄話をしているか | 職員同士のコミュニケーションが活発か | ❌ | 不満以外はあまりコミュニケーションがない。 | |
表情 | 入居者に向ける表情が穏やかか | ❌ | 入居者を見ていない。叱るなど。 | |
物の配置 | 椅子とテーブル | その人にあったテーブルや椅子を使用しているか | △ | 椅子とテーブルは一律。 |
動線 | 車椅子が通るのに邪魔のものが置いていないか | ◯ | 動線は広々としている。 | |
入居者向け掲示物 | 高齢者が見やすい配慮があるか | ◯ | 入居者向けの張り紙は少ないが低い位置にある。 | |
職員向け掲示物 | 管理が適切か | ❌ | 古い紙の上にどんどん重ねて貼っている。 | |
内容は前向きか | △ | 感情は見えなかった |
「職員の様子」に関する項目が全て❌になっています。
この様な内容を入居検討中の家族がパンフレットや職員の説明から計り知ることは出来ません。
ぜひ施設内を見学して、施設の体制と文化を知るための情報をこの記事から少しでも感じてくださると嬉しいです。見学中、疑問に思う事があったらそこにいる職員にどんどん質問をしましょう。
ご家族様を大切に思われている。というだけのことですから何も遠慮することはありません。職員、ひいては施設側でさえも入居者やその家族様の態度に合わせて対応を変えるものなので、熱心な方には熱心に応えてくれるはずです。
結局は人対人ですので相性があるのも事実です。
施設選びは70~80点取れれば合格点で、満点の施設はありません。
◎や○でなくても△でいいのです。
後はご本人様・ご家族様が、現場や施設との良い関係を築いていき、丸に近い三角になって行くのが理想ではないかと思います。
皆様が後悔の少ない施設選びができますように。
また別の施設の潜入レポートも、随時更新していきますので
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