開設30年以上! 昔からある特別養護老人ホームで働いてみたリアル!


30年以上続いているのは、地域で選ばれ続けた証。
信頼はできるけど設備は古そうだなあ。
実際のところどうなの?
この記事は開設して30年以上の特別養護老人ホームに
介護士として6日間勤務した短期バイトの経験の共有です。
☑️この記事でわかること
- 10時〜13時までの食堂での様子
- お部屋で休まれているときの様子
- ベテラン介護士から見たこの施設の特徴
- 総評

前提
私が働いた地域の人口は69万人。
高齢化率は21.3%で、約5人に1人が高齢者。
特養と有料老人ホームの数は150件以上。
その中の一つ
1990年代に建てられた特別養護老人ホームでの潜入実録レポートです。
どこの施設かが特定されることは望んでいませんので、その可能性がある場合は少し数字を変更していますが、全て私自身が経験した事実であり私的な表現であることご理解お願いします。
施設概要
母体は社会福祉法人(生活支援が目的の非営利)で、ホームページによると明治時代から貧困層の方々を助けていた様です。
地域包括支援センターも運営していて、生活保護受給者を受け入れたり、高齢者への配食サービスを行う福祉事業者です。
特養の運営はこの一件だけで、本部事務所もこの特養内にあるので、法人の中枢といえる施設です。
入居率100%
第一印象
建物は古くても排泄物の匂いはしません。
同年代に建てられた別の特養は玄関から匂いが酷かったのでなんの違いか興味が湧きます。
ロッカールームはさっぱりと整頓されていて使い心地は良かったです。
制服を上下ともに支給され、私が今日1日だけのバイトとは分からない様になっています。
介護するフロアに通され、スタッフステーションに行くと一応という感じで挨拶があり、始業時間になるまでステーション内で待ちます。
古い建物特有で全体がうす暗いです。書類が無造作にたくさん貼られていて雑然と見えますが、個人情報の類のものはきちんと管理されている様でした。
食堂での様子
この施設はバイトの勤務時間が短く設定されていて、主な仕事は食堂で水分や食事を口に入れてあげる介助でした。お風呂介助やおむつ交換は担当させないようです。

介護度の高い方が多く、
⚫︎体が拘縮して固まっている
⚫︎お喋りができない
⚫︎自分でご飯や水分が摂れない
上記の様な方大勢いらっしゃいました。
これはかなり食事介助に時間がかかりそうです。
施設が食事時のみのバイトを入れる理由がわかります。
食堂のキャパに対して人の数の方が多く、食事介助の必要な方はぎゅうぎゅうに並べられている様な雰囲気です。

ご自身で召し上がれる方々にはしっかりとテーブルの広さを確保してあります。
食事時だけは各部署から職員が集まってきて、1人で2〜4名の食事介助を行います。
介助が必要な方は37%で、お食事は、きざみ食・ソフト食・ミキサー食が多かったです。
ベネッセスタイルさんの「介護アンテナ」に分かりやすい写真があったので転用させていただきました。↓

食べられる量が減ったり、活動量が少なくなった高齢者には、成人の半分くらいの量が一食として提供されます。
その分のカロリーやタンパク質を補うために補助食品(ゼリーやドリンク)があります。
補助食品は甘い味が多く食事の進まない方にも好評なことがほとんどで、
食事を頑張ったら甘いゼリー食べましょうねと声をかけて食事を促す。
本当にお食事の進まない方には補助食品から食べ進めて行き、ご飯やお味噌汁などのお食事は食べられれば食べるというタイルが今のこの業界の基本です。
それほど栄養価が高く、バランスや味が良いので効率的なのです。
以前私が長く働いた施設には、この補助食品しか口にしない100歳超えの方がおられましたが、3年間元気に生きておられました。
ご本人がそのような生き方を望んだかは不明ですが、「まだお家で十分暮らせるけど食事の量が減って筋肉量の減少が心配」このような状態であれば、補助食品はとても効率的と言えるでしょう。
少量で高カロリーの栄養補助食品の例

他にもたくさん種類がありますのでお好みのものを探してみてはいかがでしょうか
お部屋で休まれている時の様子
基本的には4人部屋がカーテンで仕切られている昔のスタイルのお部屋です。
イメージとして千葉県の特養「ひまわりの丘」さんが4人部屋をリニューアルした時の画像をお借りしました↓


個人のスペースにはベッドとタンス、床頭台が一つずつ。
洗面台はお部屋に一台、お手洗いは廊下を出た共用部にあります。
⚫︎皆さん静かにベッドで休んでおられて、ラジオやテレビの音は一切なし、座っている方すら見当たらず、どのお部屋もシーンとしていました。
⚫︎体が拘縮している方の場合、横になるとベッドと体の間にたくさん空間ができてしまうので、その隙間を埋めるクッションなどを使用する事が多いですが
ここは多少の拘縮ではクッションは使わず自然に横向きで寝てもらっている様です。
ちなみに下図ような体の状態の方はクッションなしには天井を向いて寝ることはできません。左右のどちらかに転がってこの様な体の格好になります。

自分の足で立ち上がらない方が、関節を曲げた状態で長時間いると、関節の可動域が狭くなり、体が硬く固まってしまいます。
可能な限り、クッションなどを入れて脚や手を伸ばす方が良いと私は習って来ました。

もしご自宅で介護している方が、体を丸めて横になって寝る癖があって、立ち上がらない方(足の底を地面につけて自分の体重をかけて立つ事が極端に少ない)は拘縮していくリスクがありますので、できるだけ大きな関節を伸ばした状態でお休みになることをお勧めします。
バスタオルでも、タオルケットでも何でもいいので、体とベッドの間に隙間のない自然な体の格好にしてあげて下さい。
真横に向いていると、骨盤のところ一点に圧がかかり過ぎるので、仰向けに近い横向きが理想です。

⚫︎珍しいことに1日だけけオムツ介助をする機会があったのですが、4人担当したうち3人が同じところに傷跡がありました。
片側の腰骨の辺りに二本線の擦り傷で、新しい傷に見えました。このキズを作るには

オムツ交換の時にマジックテープの部分を折り畳まずに引っ張ってしまうと、みんな同じような傷ができます。
1人でもこれをやってしまう職員がいると、オムツ使用者全員にこの傷ができることになります。
たくさんの職員が交代でオムツ交換をするので、誰がやったのかは予測でしかなく、
厳しく罰則を設けて事故の報告をさせようとしてもキズを作っていない職員が発見し、何枚も報告書を書くことになりかねません。
リーダー、主任、施設長などの上層部が毅然とした態度を示せるかが鍵となってきます。
ベテラン介護士から見たこの施設の特徴
⚫︎食事介助が必要な人が多すぎる。
施設としてこれ以上食事介助はできないのに、食事介助者を新たに入居させてしまうのか、
入居した後に段々と食べられなくなった人が増えたのかは不明ですが、明らかに職員の数に対して食事介助者が多いです。
ある職員に質問してみると「以前は職員の数が充実していたが、退職した人が多くこの状況になった。」とのことでしたが、早番や夜勤というその日働く職員の枠が増減するわけではないので、あまり関係ないかなと見ています。
施設の介護記録には10時、12時、15時に飲食したとなっていますが、
実際には10時頃〜13時頃までの約3時間で、その3つの時間帯の飲食を一気にする。
これが日常化している様です。
⚫︎職員のコミュニケーションが少ない?
1日バイトの私に気を遣って仲良くする必要は全くないのですが、介護士は人好きな方が多く朗らかな会話ができることもあります。
私が付いた職員は6日で4名でしたが、そのうちの2人はいつも機嫌が悪く指示を出すのもめんどくさそうにボソボソと小声で最小限の発語でした。
入居者への態度も怠慢で高圧的、おしぼりやエプロンを毎回投げて配る人もいます。
一度はキャスターの付いたテーブルを入居者のそばに設置するのに勢いをつけて転がすので、入居者の手の甲にテーブルが当たるのを見ました。血管の弱い高齢者には内出血の元なので本当に驚きました。
あとの2人は愛のある介護士で、一人一人に丁寧に接していました。
そのうちの1人は、誰が声をかけてもウトウトしている入居者さんをどんどん喋らせたり、水分の進まない人にゴクゴク飲ませたり出来るスーパー介護士さんでした。
簡単に良い介護士、愛のない介護士と分けた時、お互いが一緒の場に居たらどう反応するのか見ていると、良い介護士同士は仕事のことプライベートのこと関係なくよくお話をしています。愛のない介護士は存在を消すように黙って黙々と仕事をする感じでした。
ここからみると、愛のない介護士にとって居心地が悪い施設ではないかと思うので、愛のない介護士の方が辞めていくと予測しています。
実際に愛のない方の1人は来月で退職して別の所に行くと本人が言っていました。
⚫︎上司が居ない?
24時間体制のこの業界では日勤体に主任クラスの職員がいる事がほとんどですが、この人が格上の職員だなと分かる人に一度も会居ませんでした。
指導力や影響力のある職員がいないと仮定すると、やる気をなくした介護士が暴走していることと辻褄が合う気がします。
⚫︎口腔ケアの回数
あと気になったのは、口腔ケアの回数です。
この施設では歯磨きは夕方のみとの事でした。
複数の施設に働いていますが、毎食後、口の中の食べカスを取り除くのは常識だと思っていました。高齢者は入れ歯利用者も多く、体の機能も弱っているので口の中が食べカスだらけの人が多いです。これを放置すると肺炎の原因にもなります。
⚫︎古い施設だけど閉鎖的ではない
1日バイトの募集は新しい施設や民間の施設(有料老人ホームなど)が多く、
この施設の様に歴史があって、満床でやっと採算が取れるような特養では募集が極端に少ないです。にも関わらずその施設の歴史やイズムも知らないバイトに門戸を広げていて、考えは柔軟なのではないかと感じました。
総評
この施設は古い建物などのハード面で弱点が多く、設備の整った新しい施設に比べると職員のストレスが多い可能性が高いです。
現在勤務している職員は良い介護士と愛のない職員とに二極化しており、今後入職してくる職員によって雰囲気はどちらにでも変化できると予測します。
課題として、食事介助の必要な方の割合を減らす必要があるので、新規入居の方はご自身で召し上がれる方に限定される。と結論付けます。
あわせて読みたい老人ホームに入居する事を決めた今!ミスマッチを減らす方法 の
チェックリストも載せておきます
入居者の様子 | 肌の保湿 | 肌が乾燥していないか全体に確認 | ❌ | 保湿に問題はないが、口の周りに食べかすがついている人が多い |
髪の毛 | 髪の毛が整っているか | ◯ | お部屋にブラシが見当たらないのに不思議です | |
膝掛けや上着 | 適切な服装で過ごしているか | ◯ | 高齢者は寒がるので少し厚めにしてありました | |
好きなところにいる | 自由に移動できる環境があるか | ❌ | フロアが狭すぎて自由に動ける人は数人でした | |
職員の様子 | どこを向いているか | 入居者の見守りができる位置で作業しているか | ◯ | 入居者側に向くしかないお部屋の作りです |
無駄話をしているか | 職員同士のコミュニケーションが活発か | △ | 特定の2、3名はよくコミュニケーションをしていましたが、他の方は黙っていました | |
表情 | 入居者に向ける表情が穏やかか | △ | 上記と同様良い介護士と愛のない介護士で対応が真逆 | |
物の配置 | 椅子とテーブル | その人にあったテーブルや椅子を使用しているか | ❌ | 食堂に人を詰め込むような状態なので、あるもので対応している |
動線 | 車椅子が通るのに邪魔のものが置いていないか | ❌ | ぎゅうぎゅうなので、誰かを動かすには誰かを避ける必要がある | |
入居者向け掲示物 | 高齢者が見やすい配慮があるか | ◯ | 食堂の外に、お誕生日の写真や、必ず季節のわかる工作が施されている | |
職員向け掲示物 | 管理が適切か | ◯ | 雑然と見えるが管理はバッチリ | |
内容は前向きか | △ | 感情は見えませんでした |
「物の配置」に関する項目に❌が2個ありますがどちらも食堂の狭さが問題になっています。
「職員の様子」にいては良い対応者と悪い対応者が、真逆の行動をとっていたので三角にしました。もう少し期間をおいて再びバイトに入って、どの様に変化したか知りたいと思いました。
施設としては古い伝統に固執していない、柔軟な考えがあると思いますので、これからの発展を期待します。
この様な内容を入居検討中の家族がパンフレットや職員の説明から計り知ることは出来ません。
ぜひ施設内を見学して、施設の体制と文化を知るための情報をこの記事から少しでも感じてくださると嬉しいです。見学中、疑問に思う事があったらそこにいる職員にどんどん質問をしましょう。
ご家族様を大切に思われている。というだけのことですから何も遠慮することはありません。職員、ひいては施設側でさえも入居者やその家族様の態度に合わせて対応を変えるものなので、熱心な方には熱心に応えてくれるはずです。
結局は人対人ですので相性があるのも事実です。
施設選びは70~80点取れれば合格点で、満点の施設はありません。
◎や○でなくても△でいいのです。
後はご本人様・ご家族様が、現場や施設との良い関係を築いていき、丸に近い三角になって行くのが理想ではないかと思います。
皆様が後悔の少ない施設選びができますように。
また別の施設の潜入レポートも、随時更新していきますので
ブックマークして活用してくださいね
引用:ベネッセスタイル 介護アンテナ
引用:ひまわりの丘
引用:介護のお仕事研究所
引用:株式会社 マクニカ