老人ホームに入居する事を決めた今!ホーム選びでミスマッチを減らす方法


施設選びはスタートしたけど、何をどうやって比較すればいいんだろう?
とにかく暮らしやすい良いホームに入れてあげたいなあ
この様に感じていませんか?
この記事では、入居する”ご本人様ファースト”の目線で、良い施設を選べる基準を示したものです。
この記事でわかること
- 施設選びの初めのステップ
- 施設見学で見るべきポイント
具体例とチェックリストあり

施設選びの始めのステップ
皆さんが家族の施設入居を決めた時、大抵の方は
パンフレットを取り寄せたりホームページを見るのではないでしょうか。

しかし、施設側が作ったホームページなどには施設に都合の良い情報しか載っていません。
「安心の〇〇体制」「充実した〇〇」そのような美辞麗句が、明るく優しい写真で紹介されている事がほとんどですよね。
うちの施設はこういう方にはご入居を遠慮してもらっていますとか
この分野は実は苦手なんですといったマイナスの情報は表に出したくはないので、いくら探しても施設の本音は検索に引っかかってきません。
Googleマップなどの口コミなら生きた情報のように見えますが、
匿名でうさを晴らしたりする傾向があり
職員の感じが悪い、施設の車に煽られた、連携が取れていないなど
良い評価よりも悪い評価が多いものです。
情報を収集するには直接出向くしかありません
どんな施設なのかを知るには、施設見学は必須となるでしょう。
見学したい施設に電話で連絡すれば見学の方法を教えてくれます。

決して玄関ホールの綺麗さや、充実した設備で「素敵なホームね」と思ってはいけません。
それから、なんとか理由をつけて2回以上見学して欲しいです。
本当にここが今回の一番大切なポイントです。
初めての見学ではその施設の自慢できるところを説明されて、少し現場を見て
「現場はこんな感じですね〜」「さ、落ち着いた場所に移動して契約につながるお話を聞かせてください」という流れになりがちです。

そのホームで今後一生暮らす本人のことを考えると一回で決断するのは早計に思えますし、複数の施設を検討されているようでしたら尚更、比較できる情報は多い方が選んだ後の納得につながります。
実際の現場は、その時間を担当する職員(スキルやメンタル状態)、タイミング(忙しい、ゆったり)、その日の現場の流れ(職員数の充足度合いや、緊急の出来事があったかどうか)などによって流れる空気や雰囲気はコロコロと変わるからです。
すでに自分の家族をプロに看てもらうという大きな決断をされた訳ですから
心残りのないようにしたいものですね。
施設見学が決まったら
施設見学でチェックするべきポイント
- 入居者の様子
- 職員の様子
- 動線
- 掲示物
中に入って短時間過ごすだけで判断できる材料はこの4点です。
慎重に見ていけばどのような考えの施設なのかを感じる事ができます。
順番に細かく見ていきましょう。
①入居者の様子
肌の保湿がされているか
高齢者の皮膚は驚くほど乾燥します。
乾燥すると痒いですが放置しても介護士には特に支障はありません 。
それを丁寧に保湿している施設はかなり手間をかけていることになります。
この時必ず沢山の人の肌を見てください。
ご家族様指定の保湿剤が全然効果がない場合や保湿自体を嫌がる方もおられますので全体を見ることが大切です。
髪の毛が整っているか
1日に何度も寝起きをする入居者は髪の毛がボサボサになりがちです。 ここも介護士が手間をかけないといけない部分でもあり、自分ならボサボサは嫌なわけですから入居者を自分と同等の尊重すべき人として捉えているかが現れます。
頭を枕にこすり付ける癖のあるような方は入浴しても毛が解れない場合もありますのでこれも全体を見てもらいたいです。
膝掛けや上着
モコモコの上着を着たままベッドに寝ていたら本人希望を除いては要注意。
生活スペースでは9割の入居者が暖かそうな格好をしていたら大丈夫です。
職員が面倒だという理由でズボン下を誰にも履かせていない施設もありました。
全員のズボンの中を見ることは出来ませんが表面にも必ず働いている人の心意気が現れますので、注意深く観察してみて下さい。
好きなところにいるか
あちこちに点在しているというべきでしょうか。
一人の介護士で複数の入居者を見守るには一ヶ所に集まってくれている方が安全を確保しやすいですし、入居者がそこから動かないで居てくれたら、転倒やトラブルを事前に防げます。
テレビの前にいる人もいれば窓の外を眺めている人もいて、ウロウロしている人もいる、
こんな所は担当介護士がかなり気を配りながら個人を尊重できている環境といえます。
(レクレーションの準備中などでは何も起こっていないのに集められている場面もあります)
見分けにくいかも知れませんが、自分で動けるのに自分でブレーキを外せない状態の人や、ベルトで椅子に固定されているような人が一人でもいて、真新しい施設でなければそこは間違いなくハズレ施設です。(病院では普通にありえますので、”治療”ではなく”生活”する施設に限ります。)
この行為は身体拘束にあたり、国が2001年から指導している事項です。
実録! 知らずに身体拘束を行なっていた 介護士1年目
オープンしたての施設には拘束できるバックブレーキを搭載した車椅子がありました。
ブレーキをかけるのにいちいち腰を屈めずに足で踏むだけなので便利でした。
自分の意思で動ける入居者様に注意され、その方には使わずにいましたが
認知症で徘徊があり、他人の物を別の他人の部屋に置いてくる人にも使用していました。
当時の私は、何度お話を伺って納得できるように声をかけても数分ごとに繰り返す徘徊願望で、自分の仕事が終わるまで帰れずサービス残業。
これは拘束は仕方ない事だなと思っていました。
オープンして1年程で施設全体でバックブレーキや、鈴(入居者が動き出した時に音で知らせる)の使用を全て取りやめる取り組みが始まりました。
国からの指導(介護施設向けに作った「身体拘束ゼロへの手引き」の取り組み)が入ったわけです。
それは徹底したものでバックブレーキは「使用しない」ではなく「全て取り外し」
身体拘束についての勉強会は何種類も開催されました。
身体拘束の三原則です。
「切迫性」「非代替性」「一時性」
簡単に例えると、拘束しないと自分や他人を傷つけてしまう(切迫性)、拘束以外の手立てはない(非代替性)、それを外すために毎週カンファレンスを行って1日も早く外せるようにする(一時性)というようなイメージです。
上記の3点が満たされた時しか拘束はできませんし
この判断を個人で行うこともできません。
施設内に身体拘束防止委員会などを設置して、施設全体で判断します※
「入居者が他の人の部屋に入っちゃって私の業務が滞ります」では拘束できないことが新人職員にも理解できてくるわけです。
このことから施設内での職員に対する教育がいかに大切かがわかります。
※ご家族様の合意も必要ですが、これは入居する契約の段階で事前に合意のご署名をいただくのが一般的です
②職員の様子
どこの施設でも『今日の夜勤は誰?』と聞いてくる入居者がいます。
夜勤では人の目が少なくなり担当介護士個人の介護感が色濃く現れます。
例えば真夜中に入居者が、何か不安になって家に帰ると繰り返し訴えたとします
A介護士 『夜なんですから寝て下さい』の一点張り
B介護士 温かいミルクを淹れてくれて数分話を聞いてくれた
C介護士 3回目以降のナースコールは全て無視
D介護士 自分の作業スペースに入居者を連れて行き、眠くなるまで一緒にいてくれた
これは全て私が見た実話の一部です。
人それぞれ対応は数限りなく存在しますので、気の合う介護士が夜勤なのか気になるのは当たり前ですね。
志の高い介護士がどこの施設にも必ず存在しているのと同じ様に
自分がされたら嫌じゃないの?と思う行為を入居者に対して行う残念な介護士もまた
どこの施設にも必ず居ます。
志の高い介護士が働きやすい環境なのか
残念な介護士が居心地の良い場所なのかを感じて欲しいです。
職員はどこを向いているか
介護度の高い高齢者を見守るには数分おきに目でチェックが必要です。
見守りの必要がない方だけがフロアにいる状態では、介護士は耳だけアンテナを立てて作業することもできます。
それでも入居者に背を向けて座って黙々と記録している人よりは
顔を上げれば全員が見渡せる場所で作業をしている人の方が好ましいです。
入居者の席に混ざって記録する人もいます。
話しかけられたりするので集中して記録できないのですが、これは入居者様から喜ばれます。
無駄話をしているか
私が良い施設と思う施設の共通の特徴として、職員同士が活発にお話ししています。
8〜9割は仕事のことですが、私語やちょっとした愚痴も含めてみんなで共有している事が、風通しの良さではないかと分析しています。
介護士だけでなく事務職や看護師、栄養担当者など各専門職が現場を行き来する度に、座ってジッとしている入居者にも無駄話をかけています。
職員は職員同士でしか話さず、入居者への介助の際は丁寧な言葉だけど一線を引いている、これが普通です。
このようなお喋り大好き施設は残念な介護士には居心地が悪いものです。
表情
見えにくいかもしれませんが、見学者に向ける表情ではなく入居者に向ける表情を観察して欲しいです。
外から来た人には良い顔を見せますが、普段の表情は入居者に向いた時に現れます。
③物の配置
椅子とテーブル
不自然な高さの椅子やテーブルはありませんか?
背が低い、もしくは腰が曲がっている方が高いテーブルで窮屈そうにくつろいだりしていませんか。
動線
動線の悪さは介護士のストレスになります。
人がよく通るところに物が放置してありませんか?
使わないような荷物がたくさん積み上がったりしていませんか?
入居者に向けた掲示物
車椅子の方が多い施設ならその目線で見やすい位置に貼ってありますか?
老眼でも読めるような字の大きさですか?
これがクリアできている施設はあまりないのが現状ですが、まれに存在します
入居者の立場に立って考えられて、実行できる人が働いているんでしょうね。。
職員に向けた掲示物
ほとんどの施設で職員向けの掲示物をステーション(詰所)や冷蔵庫などで見る事ができます。
1件だけ一切の掲示物が見当たらない施設がありましたがこれはレアケースだと思います。
探して欲しいのはこのような掲示物です。
・紙が重なり合って昔の張り紙は内容が見えない(必要・不要を判断できない)
・昔の紙に何枚も重ねて束になっている(古い書類を管理できない)
・命令口調(〇〇厳守!!〇〇は何枚まで!!)
・驚くほど細かい指示
このような施設もあれば
・必要最低限の掲示物が整理されている
・読んだ人がほんわかするような思わずやる気になっちゃう張り紙やメモ書きがある
(〇〇ですどうぞ)(〇〇までですよろしく〜)など
掲示物一つでどのような人の集まりが働いているのかを垣間見る事ができます。
以上3点の視点があれば、その施設の深くまで感じ取る見学ができますので、ぜひ参考になさって下さい。
入居者 | 肌の保湿 | 肌が乾燥していないか全体に確認 | ||
髪の毛 | 髪の毛が整っているか | |||
膝掛けや上着 | 適切な服装で過ごしているか | |||
好きなところにいる | 自由に移動できる環境があるか | |||
職員 | どこを向いているか | 入居者の見守りができる位置で作業しているか | ||
無駄話をしているか | 職員同士のコミュニケーションが活発か | |||
表情 | 入居者に向ける表情が穏やかか | |||
物の配置 | 椅子とテーブル | その人にあったテーブルや椅子を使用しているか | ||
動線 | 車椅子が通るのに邪魔のものが置いていないか | |||
入居者向け掲示物 | 高齢者が見やすい配慮があるか | |||
職員向け掲示物 | 管理が適切か | |||
内容は前向きか |
実際に私が複数の施設で短期バイトをして、このリストに沿ってどんな施設だったのかを評価している記事を随時更新しています。
実際に働いたからわかるリアルな現場①
実際に働いたからわかるリアルな現場③
まとめ
今回は、施設選びの初めのステップと
施設見学で見るべきポイントをご紹介しました。
①施設見学は直接施設にアポイントメントを取る。
②見学はなんとかして2回以上か、出来るだけ長めに。
分からない事は納得がいくまで現場の方に質問して大丈夫です。
③”施設見学でチェックするべき4つのポイント”を観察しつつ全体を見る
施設選びの比較に使える確実な情報なので
ブックマークして活用して下さいね
みなさんの施設選びが納得のいくものとなりますように。