【完全ガイド】高齢者の洋服準備で失敗しない!施設でも安心の衣類とは?介護士の本音でお伝えします。

「どんな服を持たせればいいのかわからない…」
高齢のご家族が介護施設に入ることになったとき、多くの方がまず悩むのが「衣類の準備」ですよね。
- 何を何枚用意すればいいの?
- 名前ってどうやって書くの?
- パジャマと普段着は分けた方がいいの?
——そして、いざ用意しても「服がなくなった」「職員から着替えが難しいと言われた」など、思わぬトラブルが起きることも少なくありません。
実はこれ、ご家族様と介護士との間でよくある“すれ違い”なんです。
私自身、介護士として現場で長年働いてきましたが、衣類の準備にまつわるトラブルやご家族様との誤解は、本当に多く目にしてきました。
「この服はご本人様に合っていないけど…どう伝えよう」
「名前が消えていて誰のかわからない…どうしよう」
そんな現場の「本音」や「工夫」を、この記事では包み隠さずお伝えします。
- 衣類の紛失を防ぐための“名前つけ”のコツ
- 介護に適した服の条件とは?
- ご本人様にとって負担の少ない衣類の選び方
- 介護士からご家族に伝えたい「本当の気持ち」
「服装ひとつで変わる関係性」。現場を理解したお洋服の選び方は、
介護士との信頼を深め、ご本人様の施設生活を安定させることができます。
大切なご家族が安心して過ごせるように、ぜひ衣類選びの参考にしてください。

なぜ介護施設で服がなくなるのか?
洗濯物って、こうしてなくなります…
本当に不思議なんです。
片方だけの靴下、ズボン下だけ……なぜか行方不明になってしまうんです。
もちろん、洋服がなくなったり、縮んだりしてしまった場合には「事故報告」として書類を作成し、各所に印鑑をもらって、ご家族にもご報告しなければなりません。
だからこそ、誰も失くしたいなんて思っていないんです。
それでも、なくなるんです……本当にごめんなさい。
私は今は施設を退職していますが、バイトで行った先でもつい、洗濯物の管理方法を研究してしまいます。
いろんな現場を見た中で、家庭用洗濯機で1人ずつ洗う、もしくは洗濯ネットに入れたまま洗う(ただし汚れは落ちにくい)という方法が、一番紛失が少ないように感じました。
私が勤務していた施設では、大型の業務用洗濯機で洗濯ネットから衣類を出し、ユニットごと(9〜12人単位)に、他のユニットと混ざらないように分けて洗っていました。
「どうしたらなくならないのか?」
当時の私たちは、みんなで知恵を出し合い、何とか解決しようといろいろな工夫を重ねていました。
工夫してみたけれど、うまくいかなかったこと
洗濯物の紛失を減らすために、現場ではいろいろな工夫を試みてきました。
でも、どれも「あと一歩足りない」結果に終わってしまいました。
① チェックリストで管理してみよう!
「どんな色で、どんな柄の服を何枚出したのか」を記録すれば間違いが防げるのでは?
と考え、リストを作成しました。
でも実際には、洗濯物を出す人と片付ける人で“色の認識”が違っていて、正確なチェックが難しいのです。

そして「この服がない」と気づいたときには、すでにどうすることもできない状態。
➡️ボツ
② 部屋に置く服の枚数を制限しよう!
持ち込みの服が多すぎると紛失リスクが高まる。それでは、枚数を決めてみては?
……という案も出ましたが、ご家庭ごとに事情が異なり、一律のルールにはできませんでした。
➡️ボツ
③ ビニール袋の色分けで、誤廃棄を防ごう!
汚れた肌着が、紙パンツと一緒に誤って捨てられているかも?
そこで、捨てる用と消毒用でビニール袋の色を分ける方法を導入。
ところが、袋の管理が煩雑になり、結局、効果は見られませんでした。
➡️ボツ
わざとではないのです。
本当に、わざとではないのですが、私たちはときどき、洋服をなくしてしまいます。
そしてもう一つ、よく起こりがちなのが……

器具用と衣類用の消毒液を間違えて使い、お洋服の色を脱色してしまう事故です。
これもまた、「気をつけていたのに、やってしまった…」という類のもの。
ここまで読んでくださったご家族様へ。
どうか「現場ではこんなことが起こりうる」ということを、少しでも知っていただけたら、そして施設とのやり取りの中で活かしていただけたらと思い、書かせていただきました。
名前つけのおすすめ方法
名前が消えていく日常
お洋服の場合は、洗濯を繰り返すうちに名前がだんだん薄くなってしまいます。
そのたびに、居室の担当職員、入浴担当、洗濯係などが油性マジック片手に上書きをします。
でも、黒い服はさらに大変です。
白ペンで書いても、すぐに薄くなって読めなくなってしまうんです。
中には、違う人の名前を間違って書かれてしまっていたこともありました。
正直、職員によっては適当に書いてしまう人もいるのが現実です。
私は、担当する入居者さんの黒い衣類は自宅に持ち帰り、自分でアイロンテープに名前を書いて貼り、またその方のタンスに戻していました。
今思えば、そこまで職員がする必要はなかったのかもしれません。
でも、お洋服が迷子になるストレスを少しでも減らせたらと思うと、特に気にせずやっていました。
名前が読めない服の行き場
それでも、名前が読めない服は誰のタンスにも戻れず、段ボールに積み上がっていきます。
どうにかして戻そうと、匂いをかいで持ち主を特定したこともありますが、毎回そんなわけにはいきません。
そもそも、ご家族様が施設の相談員とやり取りするのは入居まで。
実際に持ち物に名前を書いて管理するのは、入居後に初めて関わる介護職員です。
そのため、「こういう方法で記名してください」とはなかなかお伝えできずにいました。
でも、今なら言えます
どうか、アイロンテープでお名前をつけて欲しいです。お願いします。
最近は、お名前を印刷して送ってくださるサービスもあります。
アイロンをするだけでOKなので、とても便利です。


フロッキーネーム


もちろん、無地のテープにご自身で名前を書いて、アイロンで貼り付ける方法でも大丈夫です。
右側の青いタイプは伸縮性があり、靴下などにもおすすめです。


剥がれないためにひと工夫
ご紹介した全てでアイロンの温度が足りないと、テープはすぐに剥がれてしまいます。
フロッキー以外はできれば、ミシンや手縫いで軽く縫い付けていただけるとさらに安心です。
こうした工夫で、名前が消えて、段ボールに積まれていくお洋服の数は、ぐっと減らすことができます。
衣類への名前つけは“位置”が重要|おすすめの場所と実例画像
どこに貼るかによって見やすさ・管理のしやすさが大きく変わります。
おすすめの貼り位置は以下の通りです
- トップス:首の内側・タグの下
- ズボン:ウエストの内側(後ろ側)
- 靴下:足裏側 or 履き口の内側
▶️ 「お洋服を広げたときにすぐに目につくところ。」がベストポジションです。






お裁縫が難しい方へ
もし「ちょっと面倒だな…」と感じた方は、
“ココナラ”などのスキルマーケットで「裁縫代行」として依頼することも可能です。
大切なお洋服を迷子にしないために、少しだけご協力いただけたら嬉しいです。
介護に適した衣類とは… 本人様の喜ぶ衣類
靴下
男性の場合、時々長いビジネスソックスのようなものをお持ちになる方おられるのですが、ご本人様によほどのこだわりがある場合を除いて、介護には不向きということをお伝えしたいです。
細身に作られていて、履かせるのに苦労するからです。
介護士が苦労するということ=履かせられるご本人様にも負担がかかっているということになります。
男女問わず、年齢とともに爪が変形したり、足がむくんで大きくなったりすることは珍しくありません。

この写真は足にむくみのある女性の写真です。
お花の模様の糸が足を圧迫してできたものです。
本人様は「痛くはない」とおっしゃってましたが、シンプルなものを履かせてあげたくなります。
だからこそ、足を締めつけない、ゆったりとした靴下が、ご本人様にとっても安心で心地よい選択になることが多いのです。
例えばこんな感じの靴下はいかがでしょうか?


肌着
「介護用品」として販売されている肌着には、ワンタッチのマジックテープ式のものがよく見られます。
店頭やネットでは、「簡単」「らくらく」「思いやり」などの言葉とともに紹介され、多くの方がお使いになっていると思います。
たしかに、新しいうちは便利なのですが、使い続けるうちにマジックテープ部分に糸くずやホコリが絡まり、留まりにくくなってしまうことがよくあります。
私の経験では、8割以上の方がうまく機能しない状態で着用されていました。
その結果、留めてもすぐ外れてしまい、お腹や胸元が開いたままになってしまう入居者さんを多く見かけました。
これは私が勤務していた施設に限らず、短期バイトで訪れた他の施設でも同じような光景でした。
マジックテープ式を選ばれる場合は、機能が落ちる前にこまめに買い替えることが大切です。
前開きや、介助がしやすいと言う点では
プラスチックボタンやスナップボタン式でも同様で、機能が落ちることはほぼありませんのでおすすめです。



⚫︎失禁が多い、ヨダレが出る、食べ物がこぼれやすい、脂性、など肌着が汚れやすい方は多めに枚数をご用意いただけると大変助かります。
実は、深刻なのは「皮膚トラブル」や「拘縮」なのです
「ゆったりした靴下」や「前開きのボタン付き肌着」は、ご家族様も分かりやすく、比較的スムーズにご対応いただけることが多いです。
ですが、皮膚トラブルや拘縮に配慮した衣類となると、説明が難しく、正しく伝えるのに苦労する場面も多いのが現実です。
こちらから「このような洋服をお願いしたいです」と丁寧にお願いしても、
ご家族様が時間をかけて探し、選んでくださった衣類が、現場で本当に必要としていたものと異なるということが、残念ながら少なくありません。
なんとかリクエストしたいお洋服の条件を伝えたくて、1人でも多くのご家族様に届けば嬉しいです。
皮膚にかゆみのある方に適したお洋服選び
これはあったかインナー(化学繊維)で肌荒れした様子です。

体に酷いかゆみがあり、皮膚が真っ赤になって無数のかき痕がある方が時々おられますが、その中には、肌に直接触れる衣類がすべて化学繊維でできていたというケースがあります。
ここでたくさんの介護士が大きく頷いているはずです。
特に(ポリエステル・ポリウレタン・アクリルなど)は、あったか肌着であっても、見た目が華やかであっても、人によっては肌への刺激となっている可能性があります。


かゆみを訴える方に保湿だけで対応しても、なかなか改善しない場合があります。
そんなときは、直接肌に当たる肌着の素材や、重ね着する洋服の質感を綿・麻・絹などの天然素材などに見直すことで、症状が和らぐケースが少なくありません。
おすすめはお洗濯がしやすい綿100%です。


拘縮のある方に適したお洋服選び
ここからは、少し介護度が上がった、介助量の多くなった方向けの内容となります。
実際の拘縮の例

Amazon:フレイル高齢者の関節可動域-ケアの指標としての活用より

上記の例は酷くなった後の状態ですが、介護現場にはたくさんの拘縮を持つ方が入居されています。多く見られる形にこの2パターンがあります。


体に拘縮(関節や筋肉が硬くこわばる状態)がある方は、ゆっくりと進行していきます。
施設での生活が続くと、ご家族様にはその進行や老化そのものが見えにくくなり、ご本人様の現状とご家族様の認識にズレが生じることもあります。
たとえば介護士として経験した中には――
明らかに立ち上がれない方に、ご家族が「ほら、いつもみたいに立ってみて!」と励ます場面や、
水分もほとんど取れない方に、好物だった塩辛を差し出して嫌がられてしまう、という場面を何度も見てきました。
⚫︎拘縮が進行すると起こること
- 脇と二の腕が密着し、動かそうとすると強く力が入る
- 手の内側の清潔保持が難しくなる、爪が手のひらに食い込む
- 太ももが開かなくなる
このような状態では、着替えや排泄介助には非常に大きな労力がかかり、ご本人にも負担がかかります。
そのため、私たち介護士はご家族様に「身体に負担の少ない衣類」をお願いするのですが、うまく伝わらないことも多く、何度も調整やお願いを繰り返してきました。
⚫︎衣類選びのポイント
通気性について
車椅子やベッドに背中がくっついている時間が長いです。
背中に刺繍やワッペンのような物があると汗がこもってしまいますのでフラットでシンプルなものが適しています。
伸縮性について
伸縮性のないお洋服はご本人様に負担がかかります。拘縮の酷い方に、伸びない服を着せようとすると、首の後ろや脇が擦れます。
また、一番出っ張った部分の”頭のてっぺん”、”肘”には強く負担がかかり、皮膚がめくれることもあります。かといって、伸びすぎるものはかえって不便です、すぐに破けたり伸び切ってしまってお洋服自体が使えなくなります。
サイズについて
脱いだり着たりする時に余裕が欲しいので、その方の普段のサイズよりワンサイズ大きめのものを選ぶと安心です。
形について
かぶり式の物も、着せられないわけではありませんが、前開きの方が本人様の負担が少ないと思います。

⚫︎最初に相談してから選びましょう
お洋服選びは、まず介護士と話し合い、意見をすり合わせることが大切です。
市販の介護用パジャマであっても、使い勝手によっては逆に不便なこともありますので、よく相談していただけると助かります。
少し価格は高いですが、私のおすすめはこちらです。
トンボ/キラク公式shop楽天市場店

介護のポイントを押さえた衣類が揃っていて、現場介護士が「まさにこんなお洋服が欲しかった」と思うものが多いです。
デザイナーさんが 高齢者施設に通って 介護を体験しながら開発した、お洋服が購入できます。
個人的には、病院で支給される病衣に近い感覚で、自身でオシャレを楽しめる段階ではなく、かなり介護度が進んでからの方が適していると感じます。
まとめ
今回は、なかなかお伝えしにくい介護士の本音をお話ししていきました。
①工夫しても無くしてしまうお洋服
②間違えて脱色してしまう衣類
③実は困っている記名問題
④本人様の喜ぶ衣類とは?(靴下・肌着・皮膚トラブル用・拘縮用)